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出品は“撮って選ぶだけ”に。自然なAI体験を目指す開発チームの「AI出品サポート」への思い

2024-12-24

出品は“撮って選ぶだけ”に。自然なAI体験を目指す開発チームの「AI出品サポート」への思い

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メルカリは2024年9月10日『メルカリ』上で写真を撮ってカテゴリーを選ぶだけで商品情報が作成される「AI出品サポート」の提供を開始しました。

当機能は、お客さまのアンケート調査を通じて、多くの声が寄せられた“出品のハードルの高さ”へフォーカスして、商品説明や価格設定を考える手間を省き、これまで以上に手軽な出品体験をしていただくために誕生しました。

出品者は、商品の写真を撮って、カテゴリーを選ぶだけ。商品説明や価格設定に必要な情報はAIが自動で入力するため、最短3タップで出品が完了するようになりました。

本記事では、プロジェクトを推進したプロジェクトマネジャのAyaka Okubo(@ayeong)、MLエンジニアのAndre Rusli(@andre)の2人に「AI出品サポート」をリリースするまでを振り返りながら、今後のアップデートについても聞きました。

この記事に登場する人

  • Ayaka Okubo(@ayeong)

    2019年4月にメルカリPMとして新卒入社。入社後は主に新規事業開発に携わり、外部企業と連携した越境PJ、コーディネート検索機能、メルカリ相場価格検索機能等を担当。その後一年間の産休を経て2023年4月に復職。現在は主に出品者の体験改善を担当。

  • Andre Rusli (@andre)

    生成AI/LLMチーム MLエンジニア。2023年に博士号を取得し、メルカリに入社。主なテーマとして機械学習と自然言語処理の技術を用いた第二言語習得の支援ツールの開発について研究を行った。研究を進めながら、MLやNLPを用いたサービスを提供するベンチャー企業やEdgeAIを使ったアプリ開発などにエンジニアとして貢献。現在はメルカリの生成AI/LLMチームにてLLMを活用した機能開発や技術検証などに従事。

出品課題は「複雑化したフォーム」。AI技術でメルカリの「出品」を刷新

──「AI出品サポート」のリリースの背景から教えてください。

@ayeong:メルカリは、これまで「かんたん出品」機能や「価格なし出品」「バーコード出品」機能など、出品をサポートするためにさまざまな開発チームが出品フォームに新しい機能を追加してきました。

その結果、『メルカリ』を初めて利用するお客さまや出品経験の少ないお客さまに「出品時に入力する情報が多すぎる」という印象を感じさせてしまい、「出品が大変」「手間がかかる」といったイメージを払拭しきれずにいました。私自身もメルカリの出品者として、入力が必要な情報が多いことに課題を感じていました。

今回リリースした「AI出品サポート」は、そうしたお客さまのお声をもとに開発した、メルカリ初の自動入力機能です。

@andre:技術チームも、お客さまから「出品プロセスをシンプルにしたい」というお声が昔から寄せられていることは知っていました。

2023年、AI/LLMの技術が急速に進歩したことで、本格的に出品プロセスの簡略化に向けた実験を行うことになりましたが、すぐに「AI出品サポート」のような機能の開発に着手したわけではありません。なぜなら、最初はAIで上手くいくこと、上手くいかないことを実験を通して把握する必要があったからです。

ayeong率いるListingチームと初めて協働したプロジェクトは、出品後2〜3日間売れなかった商品の改善案を提案する「セラーヒント」機能です。

セラーヒントはMLチームの実験のひとつとして開発した機能で、お客さまのサポートを行いつつ、どのような商品が売れ、どのような情報が不足していると売れづらいかといったデータを蓄積できるように運用しました。ある程度データが蓄積されたタイミングで、Ayeongから現在の「AI出品サポート」のプロトタイプとなる提案があり、一緒に進めることになりました。

──お二人が次の開発で思い描いた「AI出品サポート」のプロトタイプは、どのような機能でしたか?

@ayeong:最初は「出品時に商品説明文だけを書いてくれる」機能を想定していました。ただ、突き詰めるとより大きなインパクトにできるんじゃないかと思い、現段階の機能にトライしてみようと思いました。Ellie(メルカリ社内でChatGPTやGeminiを利用できるツール)で試した時点でも、すでに実用的な出品用の文章を生成してくれる精度がありました。

お客さまに必要なのは“AI機能”ではない?

——──体験面と技術面それぞれの観点から、開発において追求したポイントや難しかったポイントについて教えてください。

@ayeong:体験面では「出品が簡単になった」と明確に感じられる圧倒的な体験を目指すことが肝になるプロジェクトでした。既存の出品機能にAI機能をプラスするのではなく「出品の導線上で自然とAIを使っている」という体験になるように方向性を追求しました。

@andre:技術面で難しかったポイントは、2つあります。1つは、出品をシンプルにしたい反面、全てをスキップ(自動化)するのはベストではないという点です。「カテゴリの選択」を残すという判断に至るまで、いろいろな実験データの分析、AIの精度など総合的なバランスを考えたうえで、スキップしない要素を選んでいきました。

2つめは、生成AIが事実と異なる情報を出力する「ハルシネーション(AIによって生成された、虚偽または誤解を招く情報を事実として提示する応答)」の把握です。例えば「銀色のノートパソコン」の写真をアップすると、AIが「Apple」のブランドタグを自動入力してしまうのですが、それが正解の場合も、そうじゃない場合もまだあります。

一方で厳しく制限をかけすぎるのも良くないので、ある程度のハルシネーションの検出や対策システムを設計したのち、最終的にはマニュアルで確認しながらチューニングしていく必要がありました。カテゴリの中に一人、二人のエンジニアではカバーしきれない領域もあるので、社内の精通した皆さんにも協力してもらいながら開発を進めました。

──出品時に「カテゴリの選択」を残したのはどのような意図でしたか?

@ayeong:例えるなら「ミニカーを撮ったのに中古車情報が入力される」ことがあったからです。カテゴリは、自動入力の精度を担保する上で重要な情報なんですよね。さらに、カテゴリ選択についてはワンタップで最適なカテゴリに辿りつける「カテゴリサジェスション」機能を実装しているので、お客さまにとってもそう大変な作業ではないだろう、と判断したためです。

──「AI出品サポート」の機能名は、開発当初からお二人の中で定まっていたんですか?

@ayeong:なかなか定まりませんでした。わかりやすいキャッチーなネーミングにするのか、独自性を重視したネーミングにするのか、と候補はたくさんありました。最終的に「どんな機能なのかを簡潔に表せるものがいい」という話でまとまり、ABテストをしたのち、最も利用率が高い「商品名と説明文を自動で入力」という名称に変更しました。

これは、もしかするとメルカリのお客さまは「AI」と言わない方が快く受け入れてくれるのかもしれない、という仮説にもとづいたネーミングでした。

──たしかに、AIに抵抗がある人でも使いやすくなり、体験も分かりやすく伝わると感じました。このプロジェクトの最終的な目的は、出品者や出品点数を増やすことでしょうか?

@andre:そうですね。MLチームとしては、最終的に出品してから売れるまでのすべてのプロセスをサポートしていければと考えています。ですが、AIやLLMを使った機能の場合、精度面やお客さま体験、ビジネスへのインパクトなど、判断軸が多岐に渡るため、十分か不十分かの判断は我々だけでは難しいんですよね。

そのため、DiscoveryチームやSearchチーム、ListingチームのAyeongさんのようにドメイン知識の豊富なチームと連携していくことが大事だと考えています。

技術への追求は、お客さま体験を向上するため

──今後の「AI出品サポート」機能は、どのようなアップデートを想定していますか?

@ayeong:体験をよりインタラクティブにしていきたいので、UXを地道に改善していく予定です。例えば「AIがより良い情報を入力するためにはどんな写真を撮影すればいいのか」という点が、自然とお客さまに伝わるようなUXを完成させたいと思っています。

@andre:出品段階でもまだまだ改善できるところはあります。AI技術によって、ようやく大きな壁を壊せましたが、その先の道はまだ整える余地がある。出品体験に限らず、商品を探して購入する人にとっても使いやすい体験に、かつ届くべきお客さまにしっかりと商品が届くように機能を拡充していきたいと考えています。

──自動入力(文章生成)における改善点はどのように捉えていますか?

@ayeong:いわゆる「AIっぽい文章」を排除したいと思っています。すでに人間味のない文章に対するフィードバックをいただいているので、今後は出品者の書き方やスタイルに沿ったパーソナライゼーションを進め、1人でも多くのお客様に使っていただくことを目指したいと思います。

@andre:今は半分ほどの完成度だとして、改善すべきことはたくさんあります。AIの領域は変化が早く、今できていることも半年後にはさらにアップデートされるかもしれません。プロダクトとして使いやすくすることはもちろん、小さな改善の積み重ねによって、お客さま体験を向上させていくことが目標なことに変わりありません。

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