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常識を打ち破り、ワクワクする“ディグり体験”を追求。『メルカリNFT』が生まれるまで

2025-7-10

常識を打ち破り、ワクワクする“ディグり体験”を追求。『メルカリNFT』が生まれるまで

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2025年1月にローンチした『メルカリNFT』。

最大の特徴は、従来のNFTマーケットプレイスが要求する暗号資産や専用ウォレットが不要で、既存のメルカリアカウントとメルペイなどの決済手段を用いて手軽にNFTを売買できるところ。これにより、NFT取引の技術的な障壁を大幅に引き下げ、これまでNFTに触れる機会のなかった層へのアプローチが可能となりました。

この革新的なサービスはどのようにして生まれ、どのような困難を乗り越えてきたのか。そして、彼らが目指す未来とは──。今回は、当プロジェクトを主導したプロダクトマネージャーの3名、鈴木伸明(@nobu)、茂呂涼(@morochan)、深澤裕子(@yuffy)にリリースまでの道のりと試行錯誤について話聞きました。

この記事に登場する人

  • 鈴木 伸明(Nobuaki Suzuki)

    2017年入社。プリンシパルプロダクトマネージャー。前職で越境CtoC事業を行う会社を起業しメルカリ社に売却、メルペイの立ち上げ/メルペイスマートマネーの立ち上げ/暗号資産取引サービスの立ち上げを経て『メルカリNFT』を担当。X:@nobuzuki

  • 茂呂 涼(Ryo Moro)

    2024年入社。プロダクトマネジャー。学生時代に飲食店のシステムを開発・運営する会社を立ち上げ、主にアプリエンジニアとして開発に携わる。4年半の活動を経て、メルカリへ入社。現在は『メルカリNFT』を担当する。

  • 深澤 裕子(Yuko Fukasawa)

    2023年入社。プロダクトマネジャー。過去にエンジニア、ITコンサルタントの経験を持つ。暗号資産取引サービスのグロースを担当した後、2024年10月から『メルカリNFT』を担当。

若手メンバーが中心となって立ち上げたNFTプロジェクト

──まずは、NFTへの参入を決めた経緯を教えてください。

@nobu:メルカリのNFTプロジェクトの企画検討は2023年7月頃に始まりました。当初はNFTに限定せず、メルカリでデジタルアイテムの売買するプランの検討をしていました。

NFTに特化したプロジェクトとなったのは、2024年2月にメルコイン社が主催したハッカソンが大きなきっかけです。ハッカソンに集まった学生が、その後メルコインにインターンとしてジョインしてくれて、OpenSeaとメルカリ間でNFTの出品連携を行い、そのNFTをメルカリで購入する機能の開発が実証実験を兼ねてスタートしました。

メルカリのプロダクト開発では、お客さまにインタビューをさせていただき、課題やニーズを洗い出し、それに対する新しい体験設計や改善案を企画し、プロダクト仕様に落とし込み、開発に着手するというのが一般的です。一方で、NFTプロジェクトは「メルカリのアカウントでNFTを購入できるか」という箇所が技術的なチャレンジが大きいこともあり、とにかく「買える状態」を作ることを目標に、インターンメンバーを中心に技術の達成に従属する形で企画も平行して進めていました。

──その後、どのようにして『メルカリNFT』という事業が本格的に立ち上がっていったのでしょうか?

@nobu:デジタルアイテムは様々な形式で流通していますが、二次流通ができないものや、二次流通ができたとしても一定の制限があるなど、自由に売買できるものがほとんど存在しない状況です。

一方で、”もの”を購入するときは『メルカリ』で検索して売値を確認することで、自分にとって高いと感じる商品であっても売ることを前提に買ってみようという行動が生まれるようになりました。こうした変化を受け、デジタルアイテムの領域でも同じような行動変容が生まれるのではないかと仮説を立てたことが発端です。デジタルアイテムも自由に売買できるプラットフォームを実現することで、デジタルアイテムそのものの価値の向上に寄与したい。少し時間はかかるかもしれませんが、これを広く担う技術としては現時点ではNFTが最も相応しいと考えました。

この先、デジタルアイテムがNFTへと徐々に置き換わっていく未来を見据え、メルカリとしてNFTからデジタルアイテムのマーケットプレイスに参入していくのが良いのではないかとの考えに、2024年4月頃に至りました。

ちょうどその頃、インターンメンバーによる実証実験が進捗し『メルカリ』のアカウントでNFTの購入ができる技術的な検証が完了しました。一方で、NFTプロジェクトに携わる社員のほとんどが別の部署の仕事をしながら兼務で取り組んでいる状態で、またインターンメンバーが学業に戻るタイミングと重なったこともあり、サービスとしてリリースするには、組織の体制面に課題がある状況でした。

このような背景から、NFTからデジタルアイテムのマーケットプレイスへ参入することを前提に、2024年6月にメルカリの新規事業としての承認を得て、2024年7月に『メルカリNFT』の部署を発足。リリースへ向けた推進が始まりました。

事業推進の観点では一段階スピード感があがったタイミングではありましたが、法規制等の複雑な論点をクリアしていかなければならなかったり、お客さまの体験設計が十分に整っていなかったりなど……。@morochanが『メルカリNFT』にジョインしたのは、そんな超カオスな時期でしたね。

「何も決まっていない」カオスな状況からの挑戦

── カオスなNFTプロジェクトに参加したときの話を聞かせてください。

@morochan:言葉を選ばずに言えば「本当に何も決まっていないな」という印象でした(笑)。唯一決まっていたのは「年内にリリースする」というストレッチゴールだけ。

@nobu:さらに、当時の部署はメンバー数名程度のとても小さなチームでしたが、高い目標を達成すべく切磋琢磨しているタイミングでした。

──そんな状況からローンチまでには、乗り越えるべき課題がかなりあったのではないでしょうか。

@nobu:インターンメンバーが先行して技術検証を行ってくれていたので、技術面の懸念点は少ない状況でしたが、体験面で「メルカリのお客さまが、このサービスに求める価値は何か」というところがしっかりと言語化できていませんでした。ここは、@morochanがかなり頑張ってクリアにしてくれましたね。

@morochan:はい。UXリサーチを重ねながら、様々な検証を行いました。

──UXリサーチでは、具体的にどのようなことを実施されたのですか?

@morochan:そもそも、メルカリのお客さまはNFTを知らない人も多いのでは?と考えて。その検証のために、例えばOpenSea(NFTのオンラインマーケットプレイス)にある既存のNFTを見ていただき「これってどういうものだと思いますか?」とお客さまに尋ねたり、また、『メルカリ』の画面上でNFTを購入できるモックを作成し「どういうものだと感じましたか?」と聞いたりもしました。

まず実物を見ていただいて、それが何なのか直感的に理解できるのかどうかを精査していったんです。

@nobu:リサーチを進める中で、「NFT」という言葉を使わない方が良いのではないか、という議論もかなり行われましたよね。

──「NFT」という言葉を使わない方が良い?なぜそう思ったのでしょうか。

@nobu:@morochanも話していたように「NFT」がそもそもどんなものなのかを知らない人がとても多かったんです。だから、NFTという言葉を使うと、逆にどんなサービスなのか分かりづらくなってしまうんじゃないかと。

それで「デジタル◯◯」や「電子◯◯」といった、NFTを使わずにサービス内容をイメージできる名称を検討していました。とはいえ、NFTを知らない人に、それ以外の単語で説明するのも難しいのはもちろん、知っている人からすると違和感が否めません。そのバランスを図るのが難しかったですね。

@morochan:UXリサーチの結果を踏まえ、メルカリとは別の名前をあえて付ける形で『メルカリNFT』という名前に落ち着きました。

──サービス名を決める段階でも、様々な試行錯誤があったのですね。他にサービス内容を詰めていく中で、大変だったことはありますか?

@morochan:「お客さま像」、つまり『メルカリNFT』の購入者像を捉えるのが大変でしたね。当初は、これまでは海外のサービスで、かつ暗号資産ウォレットで接続して購入しなければいけなかったNFTを、いつも使っている『メルカリ』で日本円で購入できるという提供価値を考えていました。

@nobu:メルカリの暗号資産取引サービスの口座開設をしているお客さまを分母として「NFTを買ってみたいか」と調査を行ったところ、約18%の人が「買ってみたい」と回答しました。ただし、そのうち約60%の人が「買ったことがない」という結果だったんです。つまり、潜在的にNFTに興味はあるけれど、購入経験はない層が相当数いることが分かったんです。

メルカリというアクティブ利用者が多いサービスとしてこの事業に挑む以上、既存のNFT経験者だけをターゲットにするのはもったいない。リサーチの結果から、「よくわからないけど、NFTを買ってみたい」方に、裾野を広げるアプローチが必要だと考えました。そのため現在は、一度もNFTを買ったことがない方、ウォレットを使ったことがない方に向けて「いつもの『メルカリ』でNFTが買える」といった訴求を行っています。

「ディグってワクワクする」体験を徹底追求

──『メルカリNFT』の整理が進む中で、実際の体験やUIデザインはどのように決まっていったのでしょうか?

@nobu:激しい議論がありましたね(笑)。『メルカリNFT』を世に送り出すには、お客さまがメルカリに求める品質に加えて、NFTならではの「あと一押しのスパイス」が必要です。ただ、議論をすればするほど、リリース自体に懐疑的な意見が出てきて、最終的な仕様がなかなか決まらなくて。

──そんな空気を変えるきっかけは何だったのでしょうか?

@nobu:ある時、メンバー全員で何百もあるNFTプロジェクトをすべてチェックし、「良い」と思うNFTプロジェクトを選ぶワークを行ったんです。メンバーそれぞれ好きなNFTプロジェクトを挙げて、なぜそう思ったのかを言語化していくんです。

そうすると、眺めていくうちに「このNFTプロジェクトかわいくない?」「このNFTプロジェクトを買いたくなった!」といった声が上がり始めたんです。「検索して比較検討するのではなく、“とにかく眺める”」、つまりSNSのように何となく閲覧している内に深くディグってる、ような体験を醸成することが、『メルカリNFT』の勝ち筋なのではないか、と。

@yuffy:実際にNFTを買うつもりで見始めると「アニメーションがあった方が良い」とか「一つひとつの個性が強い方が良い」とか、自分が商品に求めるこだわりが見えてくるんです。『メルカリNFT』では、そうした「見ているうちに欲しいものの輪郭がはっきりしてくる」体験を提供できないか、と考えるようになりました。

──メンバー自身がNFTの魅力に触れることで、プロダクトの方向性が見えてきたのでしょうか。

@nobu:はい。「ディグる」「ワクワク」という点にフォーカスすることで、議論も格段にしやすくなりました。今振り返ると、『メルカリNFT』を方向づける大きなターニングポイントだったと思います。

──そこから、『メルカリNFT』は「ワクワク感」や「ディグり体験」に舵を切っていったのですね。

@nobu:当初は『メルカリ』のUIにトンマナを合わせたデザインにしていたんです。しかし、どうもしっくりこない。なんというか、メルカリのUIだと、うまく“ディグれない”んですよね。

そんな時、CXOから「自由にやっていいんじゃないか」「ディグり体験を作っていくべきだ」とアドバイスをもらって。デザインの自由度を上げて、既存の枠組みではなく、純粋に「ワクワク感」「ディグり体験」を追求していきました。

「メルカリがNFTを販売するなら買ってみよう」の声も

──数々の壁を乗り越えてリリースされた『メルカリNFT』。ローンチ後の社内外のリアクションはいかがでしたか?

@yuffy:まず、社内からの反応はとても良かったですね。Slackのアイコンを『メルカリNFT』で購入した商品に変えるメンバーもいて、他のサービスではなかなか見られない盛り上がりが見られました。

世間的にも、SNSを中心に「ついにメルカリがNFT販売を始めた」と大きな反応がありました。先程も話があったように、『メルカリNFT』は「ウォレットや暗号資産の知識はないけど、NFTには興味がある」という層に届けたかった。蓋を開けてみたら「メルカリがNFTを始めたから、試しに買ってみた」という方々の声がたくさん届いてきて嬉しかったですね。

他にも「NFT普及のためには、『メルカリNFT』のようなサービスが必要だ」と肯定的な意見も見られました。

──現状、どんな商品が人気なのでしょうか?

@yuffy:アニメや漫画の影響もあって、日本市場では和風の作品の売れ行きが良いですね。

一方で、私が個人的に注目していたNFTプロジェクトがなかなかディグられていなくて……。他にも、「これはもっと注目されるべきでは」というNFTプロジェクトがまだまだ眠っている状態です。もっとディグってもらうための伸びしろも、まだたくさんあるなと痛感しています。

──将来的には、どのような拡大を予想されていますか?

@nobu:既存の『メルカリ』が”もの”のマーケットプレイスだとしたら、『メルカリNFT』NFTはあらゆるデジタルアイテムが売買できるマーケットプレイスを担っていくと考えているんです。『メルカリNFT』はまだ、その第一歩、というところでしょうか。

@morochan:ことNFTに関していえば、アニメーションのNFTを『メルカリ』のお客さまのアイコンにすることが出来るようになりました。これによって、『メルカリ』のアカウントがもっと自分らしく持てるようになる。こうして、NFTの使い道を一つひとつ提案していくことも私たちの役目なのかもしれないと思っています。

▲実装されたアニメーションアイコン

@yuffy:@nobuが話してくれたとおり、メルカリで扱えているデジタル上のアイテムはまだまだほんの一部。ラインナップの中には、実際のトレーディングカードと紐づいたRWA(Real World Asset)のようなものも増えてきていますが、スニーカーやフィギュア、さらにはチケットなど、まだまだ展開できるデジタル商品はいくらでもあると思っています。

チケットの二次流通などは社会的にも取り沙汰されている課題だと思うので、メルカリがその課題を担って解決の糸口を探していきたいと思っています。

文:仲 奈々 写真:鈴木 渉 

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