
社内トークセッション「リーダーズと語る!AI/LLM舞台裏 Open Door」第3回目のゲストは、CXOの成澤真由美(@narico)。
AIによって「作り手」全体の働き方が根底から変わろうとしている今、メルカリはどのような変革を目指すのか、2,300万通りの個別最適化されたUXという未来は本当に実現可能なのか?AI/LLM室のハヤカワ五味(@gomichan)がモデレーターとなり、お客さま一人ひとりの「最高のUX」を作り出すための新たな仕組みづくりの展望や、メルカリのものづくり変革について熱を帯びたトークが繰り広げられました。
*この記事は当日の音声をもとにAIツールで構成、執筆を行っています
この記事に登場する人
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成澤真由美(Mayumi Narisawa)
執行役員 CXO Japan Region。音楽大学卒業後、音楽教育事業に従事。その後、IT業界へ転身。株式会社ディー・エヌ・エーで多くのモバイルサービス事業のService Design/ UIUXDesignに携わり、その後、株式会社Kyashにて物理カードの体験設計を担当。2018年よりメルペイに入社、Product Designerとして、新機能誕生のたびにメルペイ画面を最適化(リニューアル)するUX Leadを担い、メルペイの立ち上げからGrowthまでを牽引。Head of Designを経て、2022年1月に株式会社メルペイ 執行役員 CPOに就任。2023年6月より、執行役員 VP of Loyalty Programを兼務。2024年7月より現職。
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ハヤカワ五味 (Gomi Hayakawa)
2015年頭に株式会社ウツワを創業後、ランジェリーブランド『feast』、フェムテック事業『ILLUMINATE』など、多数の事業を展開。2022年3月にはユーグレナグループに参画し、はたらく女性向けの新規事業開発に取り組む。24年4月に退職後、2024年7月にメルカリにジョイン。生成AIの利活用に関してSNSでも積極的に発信している。
GPT-4の衝撃的進化—日本語対応とデザイン革命の転機
@gomichan: @naricoさんは、普段どのように生成AIツールを活用していますか?
@narico: 皆さんが使っているものはひと通り使っていますね。ChatGPTもMidjourneyも使っていますし、特にデザインのバックグラウンドを持っているので、Figmaに搭載されているFigma AIや最近*出てきたFigma Makeなどを使い倒しています。
*収録した6月13日時点
@gomichan: 私もSlackなどで@naricoさんの動きを拝見しているのですが、新しいものが出るとその日に必ず試されていますよね。
@narico: とにかくまず使ってみる、という感じです。一番早く使って、こんなに面白いことができた!すごい!というのを一番最初に言いたいがゆえにやっています。(笑)
@gomichan: 最初に試してすごい成果を出すことは大事ですね!トップがそうだと、みんな「早く使うっていいことだよね」「まず試してみよう」という気持ちになると思うので、すごく良い空気だと思います。
@narico: 元々メルカリにいちプレイヤーとして入って育った身なので、プレイヤー視点で触っています。GPT-4が3月末に大きなアップデートをした日があり、そこからデザイン関連もかなり進みましたね。
@gomichan: 画像生成が話題になり、某アニメーションのような画風の画像を作れることで話題になってましたね。これまで難しいとされていた日本語の描画も得意になって、文字を入れたサムネイルなども簡単に出るようになりましたね。
@narico: そこがかなりターニングポイントになりました。もちろんそれ以前から使ってはいましたが、できないなと思っていたことが、対話していくとできると気づいたんです。
世界のロードマップから2,300万通りのUX可能性へ
@narico: UXやプロダクトのVPとして、より広い視点で『メルカリ』をアップグレードさせなければいけないと思っています。例えば、社内では「前例を払拭して、1つのアプリでいくのか、複数に分けていくのか」といった分岐点を考えてほしいとよく話しています。
だからこそ、世界中でマーケットを大きくしてきた企業のプロダクトロードマップを調べたいと思った時、普通にやるとすごく時間がかかるし、どこから調べようかとなりますよね。それをChatGPTに問いかけると、ぱっと整理してくれるので、楽しみながら、遊びながら世の中のプロダクトロードマップを探りに行っていました。
@gomichan: 前例を払拭するならばアプリを一つにするか複数にするかというくらい広げた方が、フラットに考えられ、先を見据えられそうです。
@narico: そうですね。メンバーは「明日明後日のグロースのために」頑張ってくれていて、それはすごく良いことなのですが、一方で目先のことに囚われやすくなる懸念もあります。大きな視野を持って世の中のロードマップを見ていくと、どういうポジショニングでロイヤリティプログラムが作られているのか、事業特性に応じたカスタマイズが見えてくるんです。共通点も見えてくるし、ユニーク性も見えてくるし、国ごとの背景も見えてくる。
そこから立ち戻って自分たちが作っているものに何が足りていないのか、すごくアイディエーション(発想)できる。それは「創造性の発揮」だと思っているのですが、そういうものをChatGPTと一緒に会話している感じですね。
@gomichan: 皆さんが目の前のことに取り組んでくれているからこそ、@naricoさんも「メルカリが5年10年、さらにもっと長く続いていくような体験」を考えられる。そこにAIが良い形で貢献しているということですね。
@narico: その通りですね。意識しているのは、結論をChatGPTに出させないということです。そもそも発想の元をどうやって生み出すのかが大事なので、「この観点でできるだけ多くのアイデアがほしい」と聞くことが多いです。
@gomichan:ハルシネーション(AIがもっともらしい嘘をつくこと)によって、むしろ創造性が広がることもありそう。増えた選択肢の中で自分が何を選ぶか、ということがよりシャープになっていく感じでしょうか。
@narico: そうですね。私がメルカリに入社する時、誘ってくれたエンジニアに「メルカリってどういう会社なんですか」と聞いたら、「やりたいことがたくさんあるけど、やりたいことのうち、僕らができているのはまだ5%しかない会社だ」と。私が「でも、100%に到達させようとしていますよね」と言うと、「いや、やっているうちにまた新しいことをやりたくなってやりたいことが増えていく。それを繰り返していて、永遠にゴールがない」と言われました(笑)。
@gomichan: 確かに、増えていきますね。心当たりがあります(笑)。
@narico: 最近、MarketplaceCPOの@unryu-inさんともよく、メルカリの安心・安全のUXをロードマップに落とし込んで徹底的に最適化していこうという話をしているのですが、おそらく細かい改善点が大量に出てくると思います。
でも、それはこれまで私たちがものづくりを端折ってしまったからというわけではないと思っています。言うなれば、2,300万人のお客さまに対して、「最高のUX」は誰かにとってはベストかもしれないけど、誰かにとっては「バッドUX」になっているということが、2,300万通り生まれているのではないかということです。
そのレベルまで解決しようとした際、ものづくりの仕組みそのものを、一つのアイデアに絞って2,300万人に提供するのではなく、最大2,300万通りのアイデアで、2,300万通りのスクリーンでUXを提供するとか、ということが論理的にはできますよね。
@gomichan: これまで「非現実的でしょ」というアイデアだったのが、この技術の進化によって「意外に現実的になってきたんじゃないか」という実感はありますか?
@narico: ありますね。例えば先日、メルカリのプロフィール文章からお客様が大事にしていることを抽出・分類する取り組みをしました。従来はキーワードをもとにしたパターンマッチで分類していたため、誤分類が多く、正確に行おうとすると人間がすべてチェックする必要があり、3ヶ月以上かかると言われていたんです。
そこでAIを活用し、プロフィール文章を推測・分類させ、その結果を人間がサンプルでクロスチェックした結果、従来のパターンマッチによる分類よりも明らかに精度が高いことが確認できました。一致率は7〜8割と完全一致ではありませんでしたが、不一致の多くは人間のレビューでも解釈が分かれるケースだったため、つまり、AIは人間が迷うレベルの内容まで一定の精度で扱えていたといえます。
最終的には人間の確認を踏まえて全体を整理しましたが、全体の工数は大幅に削減され、わずか2週間で分類結果を出すことができたんです。
@gomichan: それで自信を持って期待値に基づいた施策をリリースできるという結論を導き出せたというのは、感動的ですね。
UXをもう一度考え直す—全社のものづくり変革への挑戦
@gomichan: 現在UXを見直すプロジェクトを始動しているそうですが、その詳細を聞いてもいいですか?
@narico:このプロジェクトのミッションは、一言で言うと「メルカリのものづくりのアプローチを、計画主導型から実験主導型へ変革すること」です。リソースの制約から一つの案に絞り込む従来の方法ではなく、AIの力で多様なデザイン案を同時に生成し、それらを計算や実験を通じて評価する。この新しいものづくりの形を、デザイナーだけでなく、PM、エンジニア、QAなど、開発に関わる全ての人に浸透させることを目指しています。
現在、プロジェクトでは主に2つの領域に注力しています。
- 誰でもUIを作れるようにする: アイデアを持つ人なら誰でも、UIの生成からデリバリーまでを実現できるツールの開発
- UIのシミュレーション機能: 生成した無数のUIを、仮想ペルソナがどう評価し、どう行動するかをシミュレーションし、レビューの課題を解決
当初は企画からデリバリーまで全てを内製する計画でしたが、現在は外部ツールも柔軟に活用しながら、「私たちが本当に作るべきシステムは何か」を探求している段階です。これは6月末まで続く予定です。完璧な計画を待つのではなく、日々生まれる新しい技術を即座に試し、試行錯誤を繰り返しながら「あるべき姿」を追求しています。
この挑戦的なプロジェクトを推進するため、私たちは明確な役割分担をしています。
- VP兼プロジェクトマネジメント(@narico): 最先端の技術動向を捉え、チームを導く
- イネーブラー: UXエンジニアなどが、技術的な実現をサポートする
- エリアエキスパート: 各領域の専門家が、業務フローのあるべき姿を追求する
- リアリティチェッカー: 現場目線で「本当に使えるか」を忖度なく検証し、机上の空論になるのを防ぐ
- エキスパート: デザインとエンジニアリングの間に立ち、共通言語を作って連携を円滑にする
このように、それぞれの専門性を活かしたチームワークで、私たちはメルカリのものづくりに大きな変革をもたらそうとしています。
@gomichan: 既存のフローにAIを活用するのではなく、フロー自体を見直すということですね。
@narico: まさにそれが本質です。新しいテクノロジーが生まれたその日に使い、自分たちの生成ゴールに導く。そこで得た新しいシステムや技術の概念を取り入れて、「自分たちが作るべきもの」と「作らなくてもいいもの」を判断していく。他チームと柔軟に連携しながら、本当に自分たちが作り出すべきシステムを探っていきたいと思っています。
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