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前例のない数値公開への挑戦。安心・安全を届ける「透明性レポート」の裏側

2025-11-21

前例のない数値公開への挑戦。安心・安全を届ける「透明性レポート」の裏側

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2025年9月1日、メルカリは初となる「透明性レポート」を公開しました。このレポートは、商品不備等によるお問い合わせ率(トラブル遭遇率)0.4%、お客さまへの補償率は1.9倍に増加など、これまで他社が開示していなかったセンシティブな数値など、他社が公開していない数値まで開示することで、「より安心・安全に取引できるマーケットプレイス」を目指す取り組みの一つです。

近年の不正リスクの高まりを受け、メルカリは「お客さまが安心して取引できる環境づくり」に一層注力しています。そのために、社内で日々議論されていた安心・安全への取り組みを、お客さまを含めた幅広いステークホルダーに数字として公開することで、より安心・安全に使っていただけるマーケットプレイスを実現したい。その強い想いで、メルカリは、今向き合っている課題と、それに対する改善を「数字で誠実に伝える」ことが不可欠だと考え、「これまで開示してこなかった数字」をあえて公開するという、会社としての覚悟を決めました。

この透明性レポート誕生の裏には、社内からの高い期待からくるさまざまな要望の調整、データアナリストなど関係各所との交渉、そして「お客さまに正直でありたい」という信念がありました。プロジェクトに関わったTnS(Trust and Safety)の別井 孝士(@betts3)、@nakakoh、@mai.i、@umenok、そしてPRの@Haru.Hに、透明性レポート公開の裏側を語ってもらいました。


*この記事は取材時の音声をもとにAIツールで構成、執筆を行っています
*写真は撮影に参加できたメンバーのみ掲載いたします

この記事に登場する人

  • @betts3 別井 孝士(Takashi Betsui)

    メルカリ Trust and Safetyに所属。広告業界にてPRプランニングやデジタルメディア活用、SNS対策など幅広い企業コミュニケーション活動に携わり、SNSモニタリングツールのベンダーにてSNSリスク対策支援を提供。2022年2月にメルカリに入社後は、CS在籍時にSNS監視体制を構築し、TnSでは権利者対応の分析や不正対策・お客さま支援に関する分析レポート作成を実施。現在はコンテンツモデレーションに関わるポリシー策定チームに参画している。

  • @nakakoh 中山 康一郎(Koichiro Nakayama)

    官公庁勤務を経て、2022年にメルカリに入社。政策企画でマーケットプレイスに関する政策対応業務などを担当。その後、Trust and Safety部門に異動し、現在はPartner Mangementチームのマネージャーとして、企業・団体との安心安全に関する連携業務を担当している。

  • @mai.i 池田 舞(Mai Ikeda)

    アパレル系ECサイトのオペレーターなどを経て、2016年にメルカリに入社。CSでRisk Controlチームの立ち上げを行い、産休を経てPartner Managementチームにて企業対応やデータ分析を担当。不正対策・お客さま支援に関する分析レポート作成の事務局に関与。 現在は一次流通企業や権利企業への対応を行い、外部とオペレーションの橋渡しを実施。 愛猫家で大型の猫2匹を飼っている。

  • @umenok 梅野賢太郎(Kentaro Umeno)

    飲食店経営や外資系ECサイトでの協力企業のマネジメントなどを経て、2022年にメルカリに入社。Trust and Safety領域で渉外対応やマーケットプレイス内のルールメイクのチームのマネジメントを歴任し、現在はシニアマネージャーとしてTrust and Safety部門の複数のチームのマネジメントをしている。

  • @Haru.H 早坂光春(Mitsuharu Hayasaka)

    官公庁勤務を経て、2021年にメルカリに入社。政策企画でフィンテックに関する政策対応業務などを担当。その後、広報部門に異動し、不正対策・AI・決算などの広報を担当。

「お客さまに正直でありたい」──透明性レポート公開の経緯と、プロジェクトを支えたチーム

—— まずは、透明性レポートを公開するに至った経緯について教えてください。

@betts3: お客さまの体験改善について、さまざまな対応・施策を進めていく中で、我々の取り組みをしっかりと対外的に伝えていかなければならないと強く実感したんです。当初は「安心・安全レポート」という名称で公開を検討していました。

@Haru.H: そもそも、メルカリではこれまでお客さまに安心してご利用いただけるよう、さまざまな不正対策を行っていましたが、これらの内容を可視化できていなかったという経緯がありました。不正対策部門には多くの関係者がいて日々対策を拡充し、実際に効果も出ている内容にも関わらず、対外的に知られていないことを課題として考えていました。
そこで、現場の人たちの取り組みやその効果を可視化していく必要があると考えたんです。そこから本格的に動きはじめ、昨年から今年にかけて、TnSのみなさんとともに、安心・安全に関する取り組み発信を強化するに至りました。

—— なるほど。具体的にはどのような役割分担でプロジェクトを進めていたのでしょうか?

@betts3: 透明性レポートは、パートナーマネジメントチームの3人(nakakoh、betts3、mai.i)を事務局として、PR、TnS、Privacy Officeのメンバーによるプロジェクトチームで準備作業を進めていました。他にはCSにデータ抽出のご協力や、Marketingによるコミュニケーション上のご意見をいただきながら進めていました。私は編集長的な役割として、レポート全体の構成を担当し、nakakohさんは関係各所との橋渡し役として、データアナリストとの調整や上層部への報告を担当。mai.iさんはデータの検証を中心に、どの情報を出せるかの選定を行いました。

また、PRのHaru.Hさんとは、発信コンテンツや方法について協力してもらい、さまざまなアドバイスをもらいました。公開直前には変更や新規項目の追加が相次いだため、umenokさんにプロジェクト管理のアドバイザリーとして入ってもらい、進捗確認やロードマップの作成をサポートしてもらいました。

@nakakoh: 当社としてはじめての取り組みだったこともあり、昨年末頃に公開に向けて動き出すことになった時点では、担当する人がいないという状況だったんです。その中でもbetts3さんは以前、安心・安全の活動を社外に発信していく方法を検討するプロジェクトも担当されていた経験があり、今回の舵取り役にまさに適任だと考えました。そこで、betts3さんにプロジェクトリーダーをお願いし、推進してもらうことになりました。

@nakakoh

—— よりレポートの中身や数値の部分に踏み込んで聞いていきたいのですが、データ選定の際に意識されていた点はありますか?

@mai.i: どのような情報を選ぶにしても、お客さまに対して正直でありたいということが最優先でした。また、お客さまだけでなく、メディアや関わっている企業の方々にどれだけ納得感を持っていただける情報を開示できるかという点が重要でした。

最初の段階では、手当たり次第に我々で管理している数字を集めることから始め、その後、管轄チームの方に「出せないでしょうか、どのような形にしたら出せるでしょうか」という、時にはギリギリの交渉を繰り返しました。

@mai.i

@betts3: 透明性レポートの裏側を語るうえで、準備期と直前期という2つのフェーズに分かれているという大前提を話しておきたいと思います。当初、透明性レポートを公開するということ自体は2025年1月には決まっていて、粛々と準備を進めていました。

しかし、2025年5月に行った安心・安全への取り組み方針「徹底的な排除・徹底的な救済」の発表を踏まえて、当初考えていた内容以上に、しっかりと情報を開示していこうという流れになりました。

そこから直前期にかけては、最終編集会議のような雰囲気で「あれも入れよう、これも入れよう」とSlack上でどんどん議論が進み、Haru.Hさんと夕方遅くや夜にミーティングを重ねて、どんどん掲載内容を詰めていった感じでしたね。

@nakakoh: 例えば、今回の透明性レポートで公開した指標の一つに「商品不備等によるお問い合わせ率(トラブル遭遇率)」というものがあります。当初、社内では、他社が開示している例も見られなかったため、出す予定はありませんでした。しかし、5月の発表を踏まえて「徹底的な」という意思を透明性レポート内で表していくためには、こういう数字こそ出すべきではないかという話に展開し、ストーリーの軸が生まれました。

そのような議論を経たからこそ、お客さまに寄り添った形のレポートができたと考えています。いざ公開後の反応を見ても、この数字への関心が高かったため、重要な指標として公開してよかったと感じています。

@betts3:カスタマーサポート(CS)に関する情報は扱いがとても難しいのですが、データアナリストなどさまざまな関係者と相談・協議を重ねることで、「お客さまへの補償率1.9倍」という具体的な数字や、補償までの時間がどれぐらい早くなったかなどの情報を初めて出すことができました。

前例がないということもあり、準備期においてはCSの情報を開示することを諦めてしまっていた部分もありました。今振り返ると、データを出せないからと最初に諦めるのではなく、「なぜ出すのか」に立ち返って検討する必要があったと思いますし、編集長として何とかして追求していかなければならなかったなと、反省しております(苦笑)。

怒涛の直前期を乗り越え、得られたポジティブな反応

—— 最終的に、あるべき姿から逆算してやり切ったことは、バリューを体現した行動だと感銘を受けました!みなさんにとって、直前期は怒涛の日々だったと思いますが、具体的にどのような点に苦労したのでしょうか?

@umenok: メルカリの透明性を対外的に発信していくことに対して、全社的に強い想いを持っていたこともあって、複数の社内のステークホルダーから受けた提案の数々を一つのレポートに落とし込んでいく、というプロセスは大変でした。

お客さまのパーセプション(認識)を大胆に変えていくためには、他社と同等のものを出すだけでは不十分だという議論が社内で加速していくにつれて、「これまで準備していた内容に加えて、他に出せるものはないか」と検討に検討を重ね、最終的には「身を切ってでも数値を出そう」という覚悟を決めました。

@betts3: Slackのメンションの量がすごかったです(笑)。スライドにたくさんのコメントが殺到して。リーガル、プライバシーオフィス、セキュリティなど、他部門の方からもたくさんのフィードバックをもらいました。

@umenok: 駆け込みのコメント数がすごかったですね。それだけ全社的に期待されているテーマで、「もっと透明性を高められないか」という想いがあったんだと思います。その期待に応えつつ、まとめていく過程は非常にチャレンジングでしたが、やり切ってくれたbetts3さんには本当に感謝しています。

—— 透明性レポートを公開した結果、世の中からはどのような反応がありましたか?

@betts3: このような「誠実さ」を表現するレポートは正直、発信のインパクトが弱くなりがちです。それにも関わらず、次々にメディアに取り扱っていただいた記事が増えていきました。一般の読者の方々もポジティブな印象を持ってくださいましたし、メルカリを愛用してくださっているお客さまからは「報道などを見て心配していたけど、真摯に取り組んでくれて本当にありがとう」という反応もいただきました。メルカリサロンの会員の方からも「よくわかりました」「ありがたいです」という声があり、非常に良かったと思います。

@betts3

—— 最後に、今後の展望について聞かせてください。半期に一度、継続的に公開していくと思いますが、どのような思いで取り組んでいきたいですか?

@umenok: 安心・安全なサービスへの取り組みは「透明性レポートを出して終わり」ではないと考えています。我々がただ「やっています」と明言するだけではなく、「実際にこれだけの数字になっています」と、真摯な姿勢でお客さまに届けなければならないと痛感しました。

外部有識者の方からも「“具体的な数字”がないと対策しているかわかりづらかったので、今回知ることができて良かった」というコメントをいただきました。できていること・できていないこと、ともにしっかりとお客さまに公開して、さらに安心・安全だと感じてもらうサイクルを、絶やすことなく続けていきたいです。

@Haru.H: このようなレポートの公開は、継続性が非常に大事だと思います。今まで公開できなかった数字を出すことができたのは大きな一歩ですが、一度始めたからには、自分たちの都合の良いタイミングで数字を出すスタンスではもういられないなと。状況に関わらず隠さずに、引き続き、透明性高く事業を運営していく覚悟が必要だと考えています。

@nakakoh: 情報を開示して外部への説明責任を果たしていくことで、「より一層、しっかりやっていこう」という社内のモチベーションにもなると思っています。今後は半年ごとに透明性レポートを通して数字を出していくことで、「この数字を改善していくために、こういった取り組みをやった方がいいんじゃないか」など、次へのアクションを生み出す発想も生まれていくはず。透明性レポートの公開は、対外的にメルカリの取り組みを見せていくだけではなく、メルカリ内のメンバーのモチベーションや取り組みを強化するためのエンジンにもなっていくと信じています。

@mai.i: 会社にとって都合のいい情報開示ではなく、お客さまにとって透明性の高い状態を担保していきたいですね。チームで取り組んでいる仕事をいつでも公開できるようにデータをしっかり取っておいたり、「こういう取り組みをしているので、次回の透明性レポートに盛り込めないか」と提案したり、そういった協力体制を整えて、しっかり準備していきたいと思っています。

@betts3: 次回以降、特に重要になってくるのはストーリー性だと思っています。メルカリは来年2月には13周年を迎えるので、今後はメルカリがこれまで歩んできたストーリーにこのレポートをしっかり刻み込むことができるかを意識していきたいです。

今年は初回ということもあって、がむしゃらにアウトプットを出すぞという感じでしたが、次回以降はデータも、中で取り組んでいる人も、ひいてはメルカリの大切にしているバリューもすべて見える状態を目指してアップデートしていきたいと思っています。

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