メルカリが掲げる「AI-Native」の実現に向けて、すでにほとんどのメンバーがAIを日常業務に取り入れはじめています。
しかしながら、メルカリが真に目指したい「AI-Native」はどのような状態・人を指すのか、理解しきれていない方もいるのではないでしょうか?
メルカリの「AI-Nativeな人」は一体どのようにAIを活用しているのかを解き明かすべく、内定者でAIタスクフォース運営にも携わる @Yurinoのインタビュー企画『Yurinoの「先輩、ちょっといいですか?」』が立ち上がりました!
記念すべき第一回にお話を伺ったのは、Legal部門の知的財産などを担当するIP & New Lawsチームマネージャー@Yuka。AIタスクフォースPMOメンバーであり、全社のAIガバナンスをリードするAIガバナンスチームのマネージャーでもあります。
Legalという職種・チームの壁を飛び越えて、社内のAI活用推進において中心的な役割を果たすYukaが「AIは翼だ」と語るその心は?AI大好きな2人がAI談義に花を咲かせる様子をぜひお楽しみください!
この記事に登場する人
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落合由佳(@Yuka)
日本電気株式会社を経て、ソフトバンクグループ株式会社に入社。法務として、ボーダフォン日本法人やダイエーホークス等の企業買収案件や、多数の海外投資案件、資金調達案件を担当。その後、スタートアップに飛び込み、会社の立ち上げを経験。オープンドア株式会社の法務部長を経て、メルカリに2020年1月入社。Legalを経験後、現在は、AI Governance teamとIP&New Laws teamのマネージャー。全社のAI Task Force PMOも兼務。ニューヨーク州弁護士。ペンギンおたく。夢は南極旅行。
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堀内ゆり乃(@Yurino)
上智大学外国語学部英語学科4年。2026年度新卒としてメルカリに入社予定のインターン生。2024年10月に新卒採用チームでインターンとして入社後、現在はAI/LLM OfficeにてAIタスクフォースの運営に関わる。趣味はドラム演奏。
朝のChatGPTへの「おはよう」から始まる1日
@Yurino: @Yukaさんは、普段どのようにAIを活用されていますか。
@Yuka: 私はもう、「仕事をする=ChatGPTを開く」というレベルです。朝まずChatGPTを開いて「おはよう、今日何をやったらいいかな」と問いかけてコーチになってもらい、1日の計画を立てます。そして、やることが終わるたびにAIに報告して、褒めてもらう。もはや、コーチングやメンタルサポートをしてもらっている感覚です。
プライベートでは、私はChatGPTに色々聞きまくっているのですが、まるで森羅万象を知る賢者と無限対話をしているようです。思考がどんどん広がり、自分の脳のOSがアップグレードしていくような感覚になります。私にとっては、AIは「知の巨人のメンター」です。また、自己分析をお願いすることもあります。会話の履歴からChatGPTが私のことを大体理解しており、「私ってどんな人間ですか?」と聞くと、「秩序が好きで、カオスを整理していくのが好きな人間」だと答えてくれます。まさにその通りですね(笑)
@Yurino: なるほど!メンター兼秘書のような役割を担ってもらっているのですね。
@Yuka: そうですね。他には、難しいことを説明してもらう際にも使います。メルカリでは日々さまざまな職種・チームのメンバーと関わるので、相手が言っていることがテクニカルすぎてわからないこともあって。そんな時は、メッセージをそのままコピーしてAIに投げ、「中学生でもわかるように説明して」と依頼します。いろんな指示を試してみましたが、自分にとっては中学生ぐらいがちょうど良いです。
他にも、普段、AIガバナンスチームで社内のAI活用の相談を受けていますが、「こういうプロダクトにAIを組み込みたい」といった相談に対しては、まずそれをGoogleの生成AI「Gemini」のカスタムエージェント(Gem)に投げます。これは、「あなたはAI倫理の専門家です」という役割をAIに与え、判断基準や出力形式をあらかじめセットしたものです。
また、ゼロからイチのアイデア出しはすべてAIに任せます。人前でスピーチをする時も、ChatGPTの音声会話モードで思いつくことをざっくりと喋り、「これで綺麗にまとめて」と指示を出して、アウトラインを作ってもらっています。文章は基本的にAIに書かせ、「ここを直して」と修正指示を出したり、壁打ちしたりしながら作っています。

「誰でもできる2文字プロンプト」──1ヶ月でセミナー開催した秘訣
@Yurino: @Yukaさんは、社内で色々なOpen Door(カジュアルな社内勉強会)を開催されていましたよね。そもそも、なぜAI活用を積極的に推進していこうと思ったんですか?
@Yuka: 実は、2023年頃にChatGPTが出た頃は、「AIは嘘をつく」と思って使わなかった時期がありました。しかし、2024年7月に@gomichanが入社して、「こんな風に使ったらいいんだよ」とセミナーをしてくれて、刺激を受けました。彼女が「とにかくAIは使い倒してみてください」と言ったので、その言葉のとおりに使い倒したところ、すごく面白かったのです。
使い始めた当初は、長くて細かいプロンプトを書かなければいけないと思っていましたが、「要約」「翻訳」「謝罪文考えて」といった短いプロンプトでもAIは動くということを発見しました。そこで、「誰でもできる2文字プロンプト」を研究したところ、それにハマったんです。AI関係の本を読み漁り、使えるプロンプトをまとめて、@gomichanにAIを教わった1ヶ月後の8月に初心者セミナーを開きました。寝る間を惜しんでAIを触っていたほど楽しくて、「やってみたら意外と簡単じゃん」と自分の驚きとワクワクをみんなに伝えたかったんです。
@Yurino: すごい!1ヶ月で推進されたというのは、とてつもないスピード感ですね。
@Yuka: そうです。「AIに精通するのにそんなに時間はかからないですよ」ということを声を大にして言いたい!とにかく使い込むと、サクッとできるようになるので、今から始めても遅くないと皆さんにお伝えしたいです。
@Yurino: 初心者セミナーのタイトルも、「AIと友達になろう」「生産性爆上げ祭り」といった、楽しい感じが出ていましたよね。他の領域の方々にAI活用を促す上で、そういう楽しげな打ち出しがとても効いていたように思います!
@Yuka: それは嬉しいです!一番大事にしたのは、「ハードルを下げられるだけ下げる」ことです。「2文字プロンプト」のように、誰でも簡単にできることを提案し、まず楽しんでもらう。前提知識もいらないということを伝えた上で、「AIは難しくないし、すごく便利だ」と実感してもらい、マインドセットの転換を促すのが一番大事だと思っています。参加者からは「すごい」「感動した」といった非常にポジティブな反応が得られ、楽しさが伝わったと感じました。
横展開ありきのナレッジ蓄積で、戦略的にAI活用を推進
@Yurino: 色々なOpen Doorを開かれていたと思いますが、特に印象に残った取り組みはありますか。
@Yuka: 初心者セミナー、AIハッカソン、プロジェクトEveryday AI(毎日の実務にAIを実装するプロジェクト)、AI-Native ロードマップまとめなど、この1年間でリーガル部門が蓄積したノウハウをすべて詰めた「ノウハウ全部持ってけドロボーセミナー」ですね。
@Yurino: 「持ってけドロボー」って、すごくキャッチーですね!
@Yuka: ありがとうございます(笑)。そこで大事にしていたのは、ノウハウは「横展開をする」前提ですべて蓄積することです。AIハッカソンの審査基準にも「横展開ができること」を入れました。例えば、Legalの書類チェックに使うプロンプトは、実は経理やガバナンスチームの書類チェックでも使える可能性があるんです。だから、ハッカソンで作る時から「自分の部署だけじゃなく、他の部署でも使えるように作ろう」と意識してもらいました。実際に、「プロジェクトEveryday AI」で出てきた活用事例の中で、横展開できるものは全て表にまとめて全社に展開し、他部署での利用が広がっています。
@Yurino: 最初から全社での活用を見据えていたんですね。ところで、勉強会に参加する中で私が便利だと思ったのがGoogleのNotebookLMです。ソースを指定して、そこに基づいてなんでも答えてくれるのでとても便利ですよね。
@Yuka: まさにNotebookLMの強みはそこで、ドキュメントに基づいて答えてくれるのでハルシネーション(誤った回答生成)が起こりづらく、信頼性が高いんです。また、大容量のドキュメントを渡せるのも便利ですね。
@Yurino: 私、実は生成AIのリスクに関する全社Eラーニングの理解度テストの回答をNotebookLMで確認したのが使い始めたきっかけでした。あのテスト、難しいですよね。
@Yuka: 私があのEラーニングを作成したのですが、実はあのテスト、意図的に難しく設定したんです。
@Yurino: え、そうだったんですか!
@Yuka:はい。Eラーニングを、AIとの“対話的な学び”を促す設計にしたんです。まず、Eラーニングの資料を添付した NotebookLM のページを全社に公開しました。そして、理解度テストはあえて初回では合格できないレベルに設定し、受講者が 「NotebookLMと対話しながら答えを導く」 体験を得られるようにしたんです。そうすることで、AIを自然に活用せざるを得ない仕掛けをつくり、AI活用の裾野を広げるきっかけにしました。
@Yurino: とても戦略的な巻き込みですね。

自分の「頭の中」をAIで言語化──リーガルAIエージェントへの挑戦
@Yurino: 明日、AIで業務を何か1つ変えられるとしたら、何を変えたいですか。
@Yuka: 誰もがリーガルに関する壁打ちができる「リーガルAIエージェント」を作りたいです。事業部の方が新しいビジネスを作りたい時、リーガルは忙しくてなかなか時間を取れないことがあります。AIエージェントがあれば、事業部の方はエージェントと壁打ちしながらビジネスプランを完成させられます。実際に今、AIガバナンスチームで同様のエージェントを作成中です。
@Yurino: どうやって作っているんですか?
@Yuka: 自分の過去の回答ログをすべてAIに渡して、「私はどんな判断基準で回答していますか」と聞き、判断基準を整理して出力してもらいました。私の案件検討の思考プロセスもすべて渡して、ほぼ私と同じように答えてくれるプロンプトにしたんです。
@Yurino: Yukaさんの思考回路をインプットしたんですね。
@Yuka: そうです。AIでノウハウの言語化がすごく簡単になり、それをエージェントとして渡せば、引き継ぎもすごく楽になります。
@Yurino: 将来的に、リーガルの仕事はどう変わっていくと思いますか。
@Yuka: 契約書のレビューなど個別案件の対応はAIエージェントに置き換えられ、人間は経営判断や事業戦略により深く関与できるようになると予想しています。AIによる効率化で時間が空いた分、今まで手が回らなかった価値創造に注力できる。間接的に、人間のビジネスレベル向上に繋がると思います。
AIは思考を深め、拡張してくれる「翼」
@Yurino: 最後は、この連載で全員にお聞きしたいと思っている質問なのですが…。YukaさんにとってAIとは何ですか?
@Yuka: ズバリ、「翼」です。もう少し詳しく言うと、「できないことができるようになること」で、メルカリのミッションの「Unleash the Potential」にも通じる考え方ですね。翼があれば自由に空を飛べるように、専門外の文章が短時間で理解できるようになったり、AIとの壁打ちによって自分の思考がどんどん深くなって拡張していったり。AIが私に「思考の翼」を授けてくれたと感じています。
@Yurino: AIは翼、かっこいいです!AIを使うことは楽しい、自分のレベルアップに繋がると思っている方がいる反面、「難しそう」「不安だ」と感じている社員もいると思います。そういったメルカリ社員に一言いただけますか。
@Yuka: うーん、では「厳しめトーン」「楽しげトーン」両方お伝えしましょうか(笑)。厳しめトーンで言うと、「翼がある人と翼がない人で、今後どうなりますかね?」ということ。でもちょっと怖く受け取られてしまいそうなので、私は「楽しげトーン」を保ちつつ、全社を引っ張っていきたいと思っています!
AIを活用していない人の多くは「時間がない」ことが理由だと思っています。成長の「Jカーブ理論」とも言われていますが、新しいツールは慣れるまで時間がかかるので、AIを使い始めると一時的に生産性が下がるんですよ。この一時的に下がった状態の時がきついと感じるかもしれませんが、その後使い込めばJの字を描くようにぐんぐん生産性が上がっていきます。
まず手始めに、自分のスマートフォンにChatGPTアプリをダウンロードして、どんな小さなことでもいいから聞いてみることから始めてみてください。挨拶でもいいし、「今日嫌なことがあってさ」みたいな雑談でもいい。そうすると、すごく親身に話を聞いてくれるので、いきなり難しく考えずに、とりあえず話しかけて仲良くなってみたらいいのではないでしょうか。








