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CSの“スタンス”を見直す。安心・安全へと進むメルカリの変化

2025-12-16

CSの“スタンス”を見直す。安心・安全へと進むメルカリの変化

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現在、メルカリは「安心・安全」に関する根本的なスタンスを転換するために取り組んでいます。従来の「性善説」に基づいたプラットフォームとしての中立的な対応から、「善良なお客さまを守るため、リスクを負ってでも介入し、被害を全額補償する」という役割へと舵を切りました。

本インタビューでは、この方針転換に至るまでの経営層の議論、不正を抑止する効果を発揮している「商品回収センター」の設置、そして現場の意識改革、さらにサービスの根幹を磨き上げる「Core UXチーム」の発足など、この1年でメルカリに起きた変化の舞台裏を、不正対策部門のディレクターである田中啓介(@kei.t)と、CS(カスタマーサービス)のディレクターを務める宮坂洋平(@yohei)に詳しく聞きました。

この記事に登場する人

  • 田中啓介(Keisuke Tanaka)

    2007年に三井住友カードへ入社し、不正検知ルール、新しい技術の導入など不正対策やRPA等を活用したオペレーションの業務効率化を主な担当として従事。2020年メルペイに入社し、メルペイ・メルカリの既存サービス、新規サービスに関する不正監視施策や3D-Secure導入、フィッシング対策にPMとして従事。直近はメルカリグループの不正対策部門の責任者(Director)として従事。

  • 宮坂 洋平(Yohei Miyasaka)

    SCSKサービスウェアでキャリアをスタートし、グリー、Kaizen Platform、OneteamでCSマネジメントに従事。2017年にAmazon Japan合同会社へ入社し、CS Program Managerとして複数のサービス立ち上げを担当後、Amazon Business Customer Success マネージャとして戦略立案に従事。2021年にメルカリに入社し、CS戦略マネージャを経て、現在はDirector of CS/TnS Operationとして、Operation全体の戦略と運営をリード。

昨年末の事案と「スタンス」の転換

まず、5月に「安心・安全」の取り組み方針を発表されましたが、ここに至るまでの経緯を教えていただけますか?

@kei.t:きっかけは去年の11、12月頃ですね。SNSを中心に、「メルカリ」で行われた取引の対応を巡って多くの声を頂きました。

出品されたお客さまに対し、購入者(バイヤー)から返品の申し出があったのですが、返品された物が全く違うものにすり替えられていたという事案です。その際、メルカリ事務局は「当事者同士で話し合ってください」という回答しか提供できず、結果的に出品者の方を守ることができませんでした。回答の背景には、私たちはプラットフォームを運営する立場であり、直接商品を提供している立場ではないので補償は行わないという考えがあったのですが、その結果、不正の被害にあったお客さまを救えなかったことがSNSやメディアで大きく取り上げられ、メルカリに対する批判の声が非常に高まりました。

そもそもお客さま対応において「我々が補償できていない」「不正なバイヤーに対して毅然とした対応ができていない」という根本的な課題が浮き彫りになったのがこの時期です。

@yohei:そうですね。その後、経営陣も含めて議論する中で、「このような事案にどう対応していくか」という話になりました。私たちは性善説に基づいてサービスを作っていますが、大半の方は善良なお客さまでも、規模が大きくなればどうしても悪意を持ったユーザーが入ってきてしまう。

「善良なお客さま(性善説)を守るためには、少数の悪意あるユーザーに対して厳しく対処し、万が一被害に遭われた方はメルカリが全額補償する」という、プラットフォームとしてリスクを取って介入する形へ舵を切るべきだという経営判断がなされました。

商品回収センターと「抑止力」

補償に踏み切るにあたり、社内ではどのような議論があったのでしょうか?

@kei.t:商品を販売するお客さま、購入するお客さま、そして商品という3つの要素がある中で、我々が「誰によって起きた出来ごとか」を判定するのは非常に難しいです。例えば、「商品が届いていない」と言われた時、送った側は「送った」と言われればそう信じるしかなく、受け取る側が「届いていない」と言われるとそう信じるしかない。我々はEC事業支社と違い、商品の検品を行なっていないため、真実はわからない領域が残るんです。それを我々がジャッジしようとすると、どうしても「中立」を保とうとして、結果的に被害者を突き放すような対応に映ってしまっていました。

@yohei:そうなんです。だからこそ、「どちらが正しいか」を証明させるのではなく、「トラブルが起きて嫌な思いをしたなら、我々が間に入って補償して解決する」という割り切りが必要でした。もちろんコストはかかりますが、それによってメルカリを嫌いになって辞めてしまう人を減らせるなら、やらない選択肢はないだろう、と。

方針転換を受けて、具体的にどのような施策を打たれたのでしょうか?

@kei.t:まず初動として出したのが、返品商品を集積する「商品回収センター」の設置です。「返品時は必ずメルカリのセンターを経由させる」ことで、中身のすり替えや不正がないかを我々がチェックするフローを作りました。これが非常に効果的でした。実は、返品センターを経由するとわかった時点で、キャンセルを取り下げる不正ユーザーが結構いるんです。

@yohei:ある種の抑止力としても機能していますよね。悪意のある方法を取ろうとする人からすれば、メルカリのセンターに物が届いて中身を見られるのはリスクですから。配送コストやオペレーションコストはかかりますが、それによって「メルカリで悪質な出品が減る」効果の方が大きいと考えています。

@kei.t:また、そもそもトラブルが発生しないことを大事にしたいので、不正対策の強化も積極的に行いました。これまでは「なるべく簡単に出品・購入できる」ことを重視してきましたが、あえて不正なユーザーには「使いづらくする」方向へシフトする決断です。

現場の反応と「効率化」の再定義

これまでの「効率重視」の方針をガラッと変えることに対して、社内はどのような反応でしたか?

@kei.t:反発はほとんどありませんでした。むしろCS(カスタマーサポート)の現場からは、「やっとできる」というポジティブな反応が多かったです。現場のメンバーは、日々お客さまの声に接しているので「もっとこうしてあげたい」「助けてあげたい」という想いをずっと持っていました。

しかし、これまでは会社のルールやリソースの壁があって手が出せなかった。経営から「コストをかけてでもお客さまを守ろう」というGoサインが出たことで、現場の熱量が一気に解放された感覚がありました。

@yohei:以前、Google Cloud Nextというイベントで登壇した時にも話したんですが、これまでは「会社視点」での効率化を重視しすぎていました。いかに早くお返事するか、それによっていかに多くのお客さまに対応できるか、と。

しかし、お客さまにとっては「早く返信が来ること」よりも「問題が解決すること」の方が重要です。何度もやり取りをして時間を奪うより、我々がすぐに補償して一発で解決する方が、結果的にお客さまの「Time is Money(時は金なり)」を守ることになります。

@kei.t:そうですね。「青い洋服を買ったつもりが、実際に届いたら紺だった」のような主観の食い違いでお客さま同士のトラブルに発展することもありますが、そこにお互いの時間を費やすくらいなら、メルカリが補償して解決した方が全員幸せだよね、という考え方に変わりました。

当たり前の安心を届けられる存在に

この1年の変化を経て、今後はどのような動きになっていくのでしょうか?

@yohei:この流れの中で、「Core UX(コア・ユーザーエクスペリエンス)」という考え方が強まっています。新機能を追加して売上を伸ばすことも大事ですが、それ以上に「当たり前のことが当たり前にできる」「安心して取引ができる」という、サービスの根幹部分(Core)を磨き込む専門チームが発足しました。

その一環として、現在、お客さまからの問い合わせ窓口をチャットサポートへと切り替えようとしています。これは、お客さまがなにか困った時になるべくお待たせする時間を減らすための取り組みで、現在のメール窓口からリアルタイムのチャットへと、すでに段階的に導入しているものです。

極端な話をすれば、問い合わせが発生しないこと、つまり困りごとが発生しないことがゴールなんです。そこへ辿りつくためには、CSや不正対策部門だけで完結するのではなく、「お客さまの声をサービスへ活かす」ということを会社の文化だといえるレベルまで横断的に浸透させていく必要がある。 メルカリを楽しく、手間無く、安心してお使いいただける環境を作ること。それが私たちのミッションだと思っています。

@kei.t:Core UXチームの発足と取り組みによって、決算発表で触れられている通り、すでに一定の成果が見えはじめています。その背景には、「この機能でメルカリを使うことを辞めてしまう」お客さまをなるべく減らし、「この機能があるからこそメルカリを使いたい」お客さまを増やしたいという思いがあります。

こうした取り組みは新機能のリリースと違って、目に見えづらく単独での効果を図りづらいことも多いのですが、きっと積み重なってたくさんのお客さまに愛されることを信じて、進めていく必要がある。引き続き、誰でも使いたくなる、そして好きだと思ってもらえるサービスになるように、努めていきたいです。

@yohei:C2Cというビジネスは、お客さま同士の信頼で成り立っています。プラットフォームを提供する私たちはその信頼を担保する「黒子」であり、同時に「守護者」でなければならない。

AIなどの技術も活用しながら、情報の非対称性をなくし、出品画像一枚でも安心して取引できるような、そんな「当たり前の安心」を提供し続けるプラットフォームにしていきたいです。

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