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「狙い通り」と「思いがけない」の両立。メルカリのSearch & Discoveryが導く体験

2026-2-20

「狙い通り」と「思いがけない」の両立。メルカリのSearch & Discoveryが導く体験

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メルカリにおける「探す」体験が、今、劇的な進化を遂げようとしています。欲しいものを確実に見つけられる便利さはそのままに、予期せぬ掘り出し物や新たなお気に入りとも出会える「ディスカバリー」の場所へ。

この大きな転換を支えているのが、機械学習を駆使して体験をアップデートするSearch & Discoveryチームです。専門性の高いエンジニアと共同し、PdM(プロダクトマネージャー)はどのようにバリューを発揮し、ユーザー体験を新たにしているのか。

本領域を牽引する石本翔真(@shouma)と柳沼慎哉(@yaginuuun)に、その舞台裏を聞きました。

プロフィール

この記事に登場する人

  • 石本 翔真(@shouma)

    大学院修了後、2023年にメルカリへデータアナリストとして新卒入社。プロダクト改善に関わるデータ分析業務に従事した後、2024年よりプロダクトマネージャーとして検索アルゴリズムやUI/UXの改善を推進。現在は、検索・出品・製品メタデータの領域を横断して改善するMatchingチームのマネージャーを担当

  • 柳沼 慎也(@yaginuuun)

    2020年メルカリ入社。JP版メルカリのデータアナリストとしてプロダクト改善のための分析に従事。機械学習エンジニアを経てプロダクトマネージャーに転身し、レコメンデーション領域の改善をリード。現在は商品との出会いを通じて購入、出品を成長させるDiscoveryチームのマネージャーを担当。

「目的がなくても楽しめる」プロダクトへのシフト

──メルカリの検索・推薦体験は、今どのような背景で変化しようとしているのでしょうか?

@shoma: 元々、課題として感じていたのは、メルカリが「欲しいものを見つけた後に訪れる場所」に留まりつつあることでした。

昨今、SNSや他のECプラットフォームの台頭により、お客さまがメルカリを開いていただく回数や、滞在時間が減少傾向にあります。そのため、特定の目的がなくても「何かいいものに出会える」という体験を提供しなければ、長期的にはお客さまとのタッチポイントを失って、メルカリ全体としても成長が難しくなると考えています。

@yaginuuun: メルカリのお客さまは「他の場所より安く買いたい」「一次流通で売り切れていたものを探したい」といった明確な目的を持って来訪される方が多い。そのため、従来の推薦(レコメンデーション)も「検索を補完するショートカット」として最適化しきました。

しかし、推薦のもう一つの重要な価値である「お客さまが思いもよらなかった商品やキーワード」との出会いを通じて、新しい購入意欲を喚起することはあまりできていなかった。現在は、この「セレンディピティ(偶然の出会い)」を提供する方向へと舵を切り、様々な試行錯誤を行っています。

ーお二人のチームが担っている現在のミッションについてお聞かせください。

@shouma:私たちは「Search & Discovery」という領域に注力しています。Search(検索)については、欲しいものが明確なお客さまが確実に商品を発見できる体験はもとより、ニーズが曖昧な状態や、言語化が難しい状態でも「期待を超える商品」に出会えるサポートをすることを目指しています。

@yaginuuun: Discovery(発見)のミッションは、商品探索そのものを楽しんでいただくことです。単に欲しいものを探し、効率的に目的の商品へショートカットさせるだけでなく、お客さま自身も気づいていなかった新たな欲しいものに出会える。例えるなら、ふらっと立ち寄った古着屋で、思いがけない掘り出し物を見つけるようなワクワク感を提供したいと考えています。

キーワードの先にある「行動の意図」を掴むために

──どのようなプロダクト改善を行っているのですか?

@yaginuuun: 具体的な改善例として、直近ではホーム画面の構造を大きく変えています。これまでは特定のキーワードに基づいたアイテム提示が中心でしたが、現在は「コンテンツの多様化」を軸に、両軸での改善を進めています。

例えばメルカリ内で盛り上がっている検索キーワードをサジェストする機能は「お客さま自身がまだ見ていないけれど、メルカリ内で今まさに盛り上がっているキーワード」を提示する、というものです。また、リアルタイムで売れ筋商品が流れるタイムラインも実装しています。この機能では、最近売り切れた人気商品の情報を提示し「今、メルカリでこんな素敵なものが売られているなら、自分も探してみよう」という探索のきっかけを創出しています。

注目の検索キーワードをサジェストする機能

──検索領域でのプロダクト改善についても教えてください。

@shouma: 検索領域では、従来のキーワードマッチングから一歩踏み込んだパーソナライゼーションを強化しています。例えば「有名なスニーカーブランドの名前」を検索した場合を想像してみてください。お客さまによって、探しているのがシンプルな子供靴なのか、大人のカジュアルなスニーカーなのか、あるいは希少なヴィンテージモデルなのかはバラバラです。お客さまの過去の閲覧傾向や好みの色・サイズ・価格帯といった嗜好性を学習し、曖昧なワードであったとしても「今、この人が見たいと思っているだろうもの」を上位に提示する仕組みを導入しました。

また、お客さまが言葉で表現できないニーズに対しても商品を探せるよう「画像検索」機能も導入しました。名称はわからないけどSNSで見かけたバッグや、今持っている服と似たものを探したいなどのニーズに対して画像で検索できる機能で、ファッションカテゴリを中心に非常に高い支持を得ています。

画像検索機能では、撮影した写真やカメラをかざすことで商品が検索可能に

リアルタイム性が切り拓く、新しい探索体験

──最近注力している「リアルタイム・パーソナライゼーション」についてもお聞かせください。

@shouma: 閲覧履歴を用いた検索結果のパーソナライゼーションを強化する中で、直近の閲覧商品であればあるほど、そのお客さまの好みを強く反映していることがわかりました。

そこで今取り組んでいるのは、お客さまの挙動に基づいたリアルタイムの並び替えです。例えば、検索結果の上部に出てきた商品を閲覧すると、スクロールした先に表示されるアイテムが、一度閲覧した商品に近いものになる。お客さまの動きによって、即座に順序を最適化する技術です。TikTokなどのSNSのように、その場その場のインタラクションで結果が更新されていく。メルカリでも、気づいたら夢中でディグしてしまうような体験を検証しています。

──それはまさにSNSのような没入感を得られそうですね。

@shouma: そうですね。ただ、どこまで「今」に寄せすぎるべきかのチューニングは非常に難しいです。多様性を残しつつ、今の興味に寄せるというバランスが商品探索の面白さを左右してしまうんですよね。

@yaginuuun: この「最適化」のバランスは、一番難しいところですね。

@shouma: お客さまへの調査を行うと「自分で探す過程を楽しみたいから、過度なレコメンデーションは不要だ」という声も一定数あります。何でも先回りして提示し、購入までの時間を短縮すればいいというわけではない、という。

@yaginuuun: よくチームでも話すのですが、誰も知らないパーティは楽しめないけれど、知っている人しかいないパーティも刺激がなくてつまらない。身近さを感じられるけど、適度に「知らない人(=新しい発見)」が混ざっている絶妙なバランスを見つけることが、継続して楽しんでいただくためには重要なんです。この「どのくらい未知の要素を混ぜるべきか」という問いには、単一のメトリクスだけでは測れない奥深さと面白さがあります。

PdMの役割はアウトプットではなく「アウトカム」を定義すること

──多くのMLエンジニアと協働する中で、PdMとして意識していることはありますか?

@shouma:Search & Discoveryチームでは、多くのML (機械学習) エンジニアとプロジェクトを共にしますが、解決策の多くは技術的なアプローチです。機械学習分野は、論文が日夜アップデートされるような世界で、PdMが技術領域でどこまで踏み込むべきかは難しいところです。

私がPdMとして重視していることは「アウトプットではなくアウトカムを定義する」という姿勢です。どの課題に対して、どの数字をどの程度改善したいのか。あるいは、このキーワードに対して、定性的にどんな結果が返ってくる状態を理想とするのか。このゴールを誰よりも明確に定義し、エンジニアが自律的にソリューションを考えられる環境を作ることにフォーカスしています。

@yaginuuun: そのうえで、エンジニアに「正しい情報」を渡す力も求められます。上段の事業戦略はもちろん、UXリサーチから得られたお客さまのインサイトを翻訳して共有すること。
前提となる目的や十分な情報共有がない状態でのアイディエーションは、どうしても技術的な偏りが出てしまいます。常にフレッシュな視点を提供することで、エンジニアから「これなら、あの技術を応用してこんな解決ができるかも」という新しいアイデアを引き出すのがPdMの醍醐味です。

──そうした仮説検証は、どのようなプロセスで進めているのですか?

@yaginuuun: メルカリはA/Bテストの文化が強い組織なので、数値での検証は頻繁に行っています。

@shouma: この領域は試行錯誤のプロセスも大変で、MLモデルを変更しても、必ずしも顧客課題の解決に直結しない不確実性があります。

例えば、A/Bテストで数値が悪かった時、モデルの動作自体に問題があったのか、それとも課題の捉え方が間違っていたのか。そこを切り分けるために、最近ではA/Bテストを実施する前に新旧モデルのアウトプットを人間の目で見て確認する「定性評価」のプロセスも泥臭く回しています。

──一般的なPdMと、この領域のPdMの役割の違いをどう捉えていますか?

@yaginuuun: 開発チームの成果物に対してPdMが説明責任を持つことは共通しています。しかし、機械学習のトレンドを理解した上で、実装でどんな変更が行われ、それがお客さまにどんな価値をもたらすのかを、日・英両言語で、かつ技術的にもビジネス的にも説明できないといけない、という専門性は求められます。

@shouma: この領域に限らず言えることですが、フリマプロダクト全体を見渡す視点も欠かせません。例えば、検索の精度を上げるには、出品時に商品情報が正しく紐付いていることが大前提。そのため、出品画面担当のPdMと連携して入力項目を定義したり、アプリを横断してデータの流れを設計したり、広い視点での働きが求められることもあるのですが、

メルカリはプロダクトチーム内での距離が近く、気軽に連携できる文化があるので、こうした大規模なデータ活用においても大きな強みになっています。

次なるSearch & Discovery体験を創るために

──最後に、Search & Discoveryの今後の展望について教えてください。

@shouma: 今後の展望としては、まずは現在取り組んでいるSearch & Discoveryの高度化をさらに突き詰めたいです。同時に、ChatGPTなどのLLM(大規模言語モデル)の普及により、検索のあり方そのものがパラダイムシフトを起こしているので、次世代の検索インターフェースはどうあるべきか、検討を進めているところです。

個人的に、一緒に働く仲間には「俯瞰と詳細」の両方の視点を持ってほしいと思っています。全社的な課題やジャーニーを捉える広い視野と、MLの細かな挙動やABテストの数値に徹底的にこだわる粘り強さ。その両立を楽しめる方にとっては、最高の環境だと思います。

@yaginuuun: 私は「出品側」の視点もより強化していきたいと考えています。メルカリは2-side marketplace、つまり、魅力的な出品があってこそDiscovery体験が成立し、購入するお客さまにも喜んでもらえる。だからこそ、新しい出品ニーズを発見できるような推薦や、出品者の方が「また出品したい」と思えるような成功体験を、AIの力でいかに最大化できるか。やるべきことは山積みです。

メルカリは外から見れば完成されたサービスに見えるかもしれませんが、私たちからすれば、Search & Discoveryといったコアな領域でさえ、まだまだ伸びしろだらけです。なので、自分の意志でチャンスを見つけ、プロアクティブに価値を創出したい方。そんな情熱を持った方と、これからのメルカリを一緒に作っていきたいです。

撮影:タケシタ トモヒロ

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