2024年9月1日、『メルカリShops』戦略顧問に楽天で常務執行役員を務めた高橋理人氏が就任しました。『メルカリShops』は、法人事業者がメルカリ上でネットショップを開設し、商品を販売できるEコマースプラットフォーム。前期のGMV(流通取引総額)が「YoY(Year Over Year:前年比)約2.7倍」を記録するなど、順調な伸びを見せています。
そうしたなかでの高橋氏の参画。EC黎明期から第一線で活躍してきた経験と深い知見は、『メルカリShops』のさらなる成長を後押しすること間違いありません。
高橋氏は『メルカリShops』にどのような可能性を見出したのか。新体制で挑む『メルカリShops』の展望とは。Merchant Directorの藤樹賢司(@kenji)、執行役員 General Manager Shops/Adsの江川嗣政(@tsugu)とともに、語ってもらいました。
この記事に登場する人
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藤樹賢司(Kenji Fujiki)
2000年株式会社ワシントン靴店入社。デザイナー、バイヤー、店舗MDを経験。2011年に株式会社ロコンドに入社し、取締役(COO)としてEC営業(BtoC、BtoB)、倉庫事業(BtoB)、オフラインプラットフォーム(BtoB)、CS、マーケティングなどのマネージメントを経験。2022年3月メルカリグループに入社。株式会社ソウゾウCEOを経て、現在はMerchant DirectorとしてGroupの営業を統括し、メルカリShopsを牽引。
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江川嗣政(Tsugumasa Egawa)
楽天株式会社にて支社の立ち上げやファッション領域における事業戦略の責任者を歴任し、グリー株式会社に入社。ゲーム事業やマーケティング事業の責任者を経て、グリーライフスタイル株式会社の代表取締役社長に就任。各種メディア事業やSNSマーケティング支援事業を経験したのち、2024年メルカリ入社。執行役員 General Manager Shops/Adsとして主に法人向けの営業強化を担当。
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高橋理人(Masato Takahashi)
新卒入社したリクルートで情報誌のDX化とネットでの新事業開発の事業部長を務め、2007年に楽天へ転職。国内外のECモール事業のほか、物流・直販・オークションなどの事業を管掌、常務執行役員として業容拡大に注力。2017年に独立し、現在は上場企業の社外取締役などを務める。2024年9月1日より『メルカリShops』戦略顧問に就任。
流通総額2.7倍を実現した『メルカリShops』の成長要因
——展望について聞く前段として、CtoCのマーケットプレイスで成長してきたメルカリが「BtoCモデル」を立ち上げた経緯を伺いたいです。
@kenji:『メルカリShops』は4つの価値提供を目指して設立されました。1つ目は「お客さまが安心安全に購入できる体験」です。ブランド品などは信頼できる事業者から買いたい、というお客さまに対して、安心安全な選択肢も提供したいと考えました。
2つ目は「在庫のある商品の購入体験(リピート体験)」。日用品などリピートされる商品の在庫が安定的に確保され、いつでも購入できるようにすることです。
3つ目が食品・飲料といった「CtoCでは扱えないカテゴリーの取り扱い」を可能にすること。そして、4つ目が「法人事業者向けの新しいサービス提供」です。CtoCのマーケットプレイスの基盤を活かしながら、BtoCのモデルを構築していくことを目指しました。
——IR資料を見ると、この1年で「GMVが約2.7倍」になっています。なにが成長ドライバーだったと思いますか?
@kenji:一番大きかったのは、思い切って「リユース」カテゴリーにフォーカスしたことです。CtoCとの相性の良さを考えてリユースカテゴリーの強化に踏み切り、そのなかでも特にインパクトの大きな大手企業さまの開拓、および運営サポートに注力したことが功を奏しました。
『メルカリShops』は少数精鋭のセールスチームでグロースしてきたので、Go Boldな成果を生み出すために選択と集中が必要だったんです。
ただ、リユースカテゴリーが伸びたことで、BtoCのマーケット自体も活性化しました。初期からご利用いただいていた個人・中小企業さまや、食品・コスメなどリユース以外のカテゴリーも伸ばすという嬉しい結果にもつながりました。
今年になってメルカリ全体の法人営業強化を担うtsuguさんが加わり、さらなる成長を実現していこうと熱量が高まっているのが『メルカリShops』の現在地です。
組織強化×プロダクト連携で、さらなる成長を実現
——チームに加わったtsuguさんは、『メルカリShops』の可能性をどう捉えていますか?
@tsugu:まず、2,300万人のMAU(マンスリー・アクティブ・ユーザー)というユーザーアセットは、『メルカリ』の圧倒的な強みだと思います。加えて、お客さまが商品を販売して得たお金が、プラットフォーム上にプールされているのもユニークなポイント。『メルカリ』内で商品を購買しようという意欲が自然と高まりますから。
そこに、先ほどkenjiさんが話されていた「大手リユース企業様の獲得」という要素が重なる。この3要素が揃っていることが『メルカリShops』の大きな可能性だと考えています。
——“さらなる成長”を目指していくために、なにに取り組んでいきますか?
@tsugu:大きく2つあり、1つはリユースカテゴリーへの引き続きの注力です。BtoCのオンラインの市場は伸びていきますし、新規参入する大手企業さまも増えていくでしょう。この領域のシェアはまだまだ増えていくと思います。
もう1つが、プロダクト改善によるユーザー体験の向上です。いまの『メルカリShops』は、他社さんと比べて実装されていない機能がある。メルカリグループの強みであるプロダクトの力を活かして、その差分を埋めていきたいと考えています。
——組織や人材の観点で、現在地と今後についてはどう考えていますか?
@kenji:これまでは、BtoCセールスの経験を持つ少数精鋭チームで動いてきましたが、これからのグロースにはマンパワーも必要になってきます。より多様なメンバーを増やし、セールス組織を拡大することで、リソース不足で責めきれていなかったところにアプローチしていこうと考えています。
——ちなみに、『メルカリShops』に入ってくるメンバーの転職理由には、どのようなものが多いですか?
@kenji:よく言われるのは、すでに大きい3大モール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング)ではなく、4大モールの一角に台頭する可能性のあるメルカリで、グロースの経験を詰めることに魅力を感じた、というものです。キャリアアップの選択肢として選んでいただいています。その分、どうグロースしていくか、マーケットプレイスと同じようなサービスにまで成長させていくかは、明確に伝えるようにしているんです。
@tsugu:「kenjiの階段」と呼ばれるロードマップがあるんですよね(笑)。これがよくできていて、どの段階でなにをすべきかが明確になっています。
@kenji:実際この1年は、描いた以上のスピードで階段を登っています。それにより、メンバーは達成感や自分のキャリアアップ、仕事への意味などを体感できている。モチベーションにも大きく関わることなので、ロードマップづくりは丁寧にやってきました。
お客さまとの深い関係性を強みに、新たなECの在り方を示す
——順調にロードマップを達成してきたということですが、このタイミングで元楽天常務の高橋さんを戦略顧問にオファーした経緯を教えてください。
@tsugu:BtoCの成長をもう一段加速するために、「仲間の採用」と「EC業界の戦略的な知見」が必要です。そこで、以前からお付き合いのあった高橋さんに打診させていただきました。楽天の急成長時代を支えた高橋さんなら、EC業界の歴史や趨勢を踏まえた俯瞰的なアドバイスをいただけるだろうと考えたんです。
——tsuguさんと高橋さんは、もともとお知り合いだったんですね。高橋さんが相談を受けたときの心境、そしてジョインに至った経緯を伺いたいです。
高橋:tsuguさんとの出会いは2007年。当時、tsuguさんは楽天の名古屋支社の責任者でした。初めての出会いはかなり印象に残っていて、楽天の展望やtsuguさん自身のドリームについて話していたら、あまりに楽しくて1時間も立ち話をしてしまったんです。最初からこんなに盛り上がれる人はいないなと思い、それからもたまに会うようになりました。
そのうちtsuguさんがグリーに転職して、次はメルカリに転職すると聞いて。あのtsuguさんがメルカリでなにをしようとしているのか気になっていたところに、kenjiさんと二人で会いにきてくれたんです。
『メルカリShops』の展望について聞いたときは、ものすごい可能性を感じました。二人を応援したくなりましたし、二人の熱量にほだされ自分も挑戦したいという思いが強くなって、戦略顧問をお引き受けすることにしたんです。
——具体的に、『メルカリShops』にどのような可能性を感じたのでしょうか?
高橋:日本におけるECの黎明期を見てきた僕からすると、ECは大きく「Amazon型」と「楽天市場型」に分かれています。知られているサービスは他にもありますが、ビジネスモデルや提供している価値としては、基本的にこの二極。そこに対して、『メルカリShops』は“第三極”になれるポテンシャルを秘めていると考えています。
Amazonとも楽天市場とも違う点は、メルカリならではの経済圏、メルカリでいう「価値の循環」がすでにあることです。趣味や買い物を楽しみたいときはマーケットプレイスを利用して、仕事をしたいときは『メルカリハロ』を利用する。加えて、メルカリ内で流通する『メルペイ』がリアルな買い物の決済にも利用されているなど、お客さまの人生のあらゆる場所にメルカリが深く寄り添っている。
それによりお客さまとメルカリの間には、特別な関係性が生まれつつあります。この基盤をもとにBtoCを構築していくとなると、Amazon型でも楽天市場型でもない、新しいBtoCをつくっていけるのではないかと思います。
——EC業界に新たな展開を生み出せる可能性があると。もっと広く見たときに、EC業界自体はさらに盛り上がっていくと思われますか?
高橋:日本のコマース業界のEC化率は実は10%程度と世界的に見ても低いので、伸びしろしかありません。また、リアルなサービスが充実している日本だからこそ、先をいく中国やアメリカなどとも違うECの在り方が実現できるかもしれない。国内という意味でも、グローバルという意味でも、まだまだやれる余白があると思います。
@tsugu:『メルカリShops』が「日本ならではのEC」になるための鍵はなんだと思いますか?
高橋:僕はやっぱり「お客さまとの深い関係性」だと思います。今回、就任のリリースを出した際に色々な方から連絡をいただいたんですが、『メルカリ』を普段から使っていて「ファンです!」と言ってくれる方が多かったんです。
ユーザーアセットが大きいサービスはいくつも見てきましたが、体感として、ここまでロイヤリティの高いユーザーがいる場所は少ないと思います。お客さまと深くつながる「日本ならではのマーケットプレイス」をつくりあげた技術や思想がある限り、BtoCでも新しい価値を生み出せるだろうと考えています。
——最後に、高橋さんがジョインしたことによるチームの変化、新体制での意気込みを教えてください。
@tsugu:まだ数回しかミーティングをしていないので、目に見える大きな変化はこれからだと思います。しかし、すでにプレスリリースの反響は非常に大きく、高橋さんの就任に加え、私とkenjiさんが取り組んでいることも公に発信できるようになってきました。その結果、事業者さまや採用に興味を持ってくださる方々から多くのご連絡をいただいています。
@kenji:ありがたいことに、「もっと説明会を開催してほしい!」と言ってくださる事業者さまもいるんです。期待していただいてる証拠だと思うので、その気持ちを裏切ることのないように邁進していきたいと思います。
執筆:佐藤史紹 編集・撮影:瀬尾陽(メルカン編集部)
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