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「AI-Native」によって何が変わるのか?@markが語る“人”を通した変化の行く末

2025-10-10

「AI-Native」によって何が変わるのか?@markが語る“人”を通した変化の行く末

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創業12年を迎えたメルカリが新年度テーマに掲げた「Back to Startup」と「AI-Native」。スタートアップ時代の高速な試行錯誤と大胆なチャレンジ精神に立ち返りながら、AIを全ての基盤として組織とプロダクトを抜本的に変えていく――。

この壮大な変革の舵取りを担う執行役 SVP of Japan Business 兼 株式会社メルペイ取締役 兼 株式会社メルコイン取締役の山本真人(@mark)は、どのような未来を描いているのか。構想をさらに掘り下げるため、インタビューを実施しました。

*この記事は取材時の音声をもとにAIツールで構成、執筆を行っています

この記事に登場する人

  • 山本真人(Masato Yamamoto)

    2004年 東京大学大学院 学際情報学府 修士課程修了。NTTドコモを経て、2008年よりGoogle JapanのEnterprise部門 Head of Partner Salesを務める。2014年にはSquare JapanにてHead of Business Development and Sales、2016年からはApple JapanにてApple Pay 加盟店事業統括責任者を務める。2018年4月にメルペイに参画し、CBOとして金融新規事業(Credit Design)や加盟店開拓など、ビジネス全般を担当。2022年1月よりメルペイ代表取締役CEOに就任し、2022年7月よりメルカリ執行役員 CEO Fintech、2023年11月よりメルカリ執行役員 CEO Marketplaceを兼務。2024年1月よりメルカリ執行役 SVP of Japan Region 兼 CEO Marketplaceに就任。2025年3月より現職。

Back to StartupとAI-Nativeの戦略的意味

—— メルカリは新年度テーマに「Back to Startup」と「AI-Native」を掲げました。それぞれをどのように解釈されているのか、あらためてお聞かせください。

人類の歴史を振り返ってみても、蒸気機関や印刷技術、インターネットやスマートフォンなど、社会やビジネスのルール自体を大きく変える技術革命が存在しました。私は、AIもそのレベルの変革を起こすイノベーションであると認識しています。AIによってあらゆるゲームのルールが書き変わってしまうほどの変化が訪れると予感していて、それにどう立ち向かうかが問われていると思います。

メルカリが創設された時の技術的な起点はスマートフォンでした。スマートフォンのテクノロジーに立脚したサービスとして開発し、ネットワーク効果で急成長を果たしました。しかし、そういったメルカリがこれまで積み上げてきた強みですら、AIの時代によって一夜にして意味を失う可能性があるという危機感があります。逆に言えば、これまでの事業や社会のルールに則って圧倒的な存在である会社やサービスに私たち自身がチャレンジできる大きなチャンスでもあるとも捉えています。

このテクノロジーの大きな潮流が生じるタイミングにおいては、大胆にAIへ力を入れることが、絶対的に必要だと考えています。こうした状況下で、AI-Nativeという言葉をこだわって使うのは、表面的なツールとしての利用ではなく、もっと根本的な、OSそのものをAIによって置き換えるものだと考えているためです。単にAIを使うのではなく、AIを前提に全てを考え直す。そうした意味合いがAI-Nativeという言葉に込められています。

また、AI-Nativeという取り組みは先に掲げたBack to Startupと非常に相性が良いとも考えています。私たちがこれまで積み上げてきたものに縛られず、スタートアップとしての大胆さやチャレンジ精神、そして違いを生み出すこと。これが「Back to Startup」であり、このスピードを加速させるために「AI-Native」というスタンスが必要。そのため、それぞれが独立したメッセージではなく、連動するものだといえるでしょう。

AIが変える”プロフェッショナル”の定義

—— AI-Nativeな組織において、従来のプロフェッショナルという概念はどう変わっていくのでしょうか。

人は、明確に変わらなければならない岐路にあると考えています。最も大きな変化は、その人が担うべきロール・アンド・レスポンシビリティ(役割と責任)が溶けて、広がるということ。例えば、これからのAI-Nativeな組織では、エンジニアがPMの領域や、さらには経営、数字の分析といった幅広い領域もAIと共に考えながら働くことが必要になり、その資質が高く評価されるようになります。

過去、実際に「この機能を半年で作るのに10人必要」と言われたプロジェクトがあったのですが、AIとエンジニアがやりとりしながら作業することで、一人も人を追加することなく、見事に予定より早く推進させたプロジェクトがありました。

これは単純にAIを使えば良いということではなく、エンジニア自身がビジネスゴールとして何を目的とし、どのような課題を解決するかという、これまでなら経営層やPMが担っていた部分も含めて自分で考え、実行できる状況が作られていたからだといえます。

作りながら考え、考えながら作ることで、かなりストレートにゴールにたどり着くことができた好例ですね。

「いけてるかどうか」が最後の砦

—— AIでできることが増える中で、人間にしかできない価値とは何でしょうか。

スペシャリストの能力には、タスクをこなす実行力と、「いけてるもの」を判断できるセンス、要は勝ち筋を見極められる能力という、二つの側面があると思っています。

今後タスクの実行はAIにより委ねていくことになる一方で、勝ち筋や「いけているかどうか」を判断したり、方向性を示すスキルの価値は失われない、むしろより高まっていくと考えています。

—— その判断力の重要性を実感された具体的な事例はありますか。

例えば、メルカリのUI検討のプロセスをAI化するプロジェクトがありました。これまでだと「何をやりたいか」をPMが考え、それをUXデザイナーがアイデアを具体化し、それを元に議論し、また持ち帰り…という行き来が起きがちではありました。

このプロジェクトでは、アイディアや議論自体をプロンプトとして入力することで、AIがUI案を出力するというものでした。UIのデザインを直接行う能力がない人であっても、何を作りたいか、何が勝ち筋なのかを考えている人であれば、言語化した内容を元に叩き台のデザインを即座に作ることができる。ものづくりの分業的なプロセスや、そうであるがゆえの遅さを根本的に変革することができます。

AIによってモックアップの速度は格段に上がりましたが、全く見当違いな指示をAIに出しても、不要なものがスピーディに出来上がるだけで、あまり意味がない。そのため、何をどう進めればゴールに最も正確に、かつスピーディーに近づけるかという勝ち筋を見極められる人に、より多くのことをやってもらえるような状態にするのが、重要なポイントだと考えています。

セルフコラボレーションの時代

—— 組織内のコラボレーションの形も変わっていくのでしょうか。

従来のコラボレーションは、特定のプロジェクトにおいて複数の人材が共同で作業を進めるという形態が主流でしたが、その大部分は定型的なタスク実行に関するものでした。これらタスク実行レベルの業務をAIに大部分委任できるようになれば、人間による直接的な作業の量は大幅に減少します。

しかし、戦略的判断や適切性の評価については、それぞれのプロフェッショナルが固有の知見を持っているため、こうした高次のコミュニケーションやコラボレーションは今後も重要であることは変わらないでしょう。

今後は企画・戦略立案段階でのコラボレーションがより重要となり、戦略的方向性や適切性に関する議論・コミュニケーションにはより多くの人材が参画し、実際の「制作」フェーズについては極少数の人材で集中的に進めるという、コラボレーション形態の根本的な変化が生じると予測しています。

—— 生産性の向上はどの程度期待できるのでしょうか。

個人の生産性向上については、2倍、3倍という従来の改善レベルではなく、10倍、100倍という桁違いの向上を実現することを目標として取り組んでいく必要があると考えています。

従来は100名規模の人員を要していたプロジェクトにおいて、非効率な意思疎通コストを負担しながら大規模チームで進行していたような業務が、AIの活用によってごく少数の人員の意思決定で完結できるようになります。これによって、従来発生していた非効率な意思疎通、意思決定プロセス、調整業務、会議等が排除され、個人または少数チームが極めて高速に意思決定できる環境が実現されていきます。

変革リーダーシップが求められる採用

—— AI-Native時代の採用基準はどう変わるのでしょうか。

新しく入社する方にとっては極めて好機であると考えています。根本的なゲームチェンジが発生している現在、従来の「既存の手法」や「これまでの蓄積」に依拠するのではなく、ゼロベースで検討した際にメルカリとして真に実行すべき戦略、またはAI基盤で考察した場合の機能発展の方向性など、革新的な発想と提言が強く求められる局面となっています。

そのため、まずAI-Nativeなマインドセットを基盤とし、社歴や経験に関係なく積極的な提言ができるような環境を作りたい。入社したてだから、専門外だからと臆するのではなく、これまで蓄積してきた専門知識や経験を基盤として、メルカリの変革に対して最大限の価値貢献を行っていただける方を期待しています。

—— 具体的にはどのような人材が求められていくのでしょうか。

採用戦略においても、従来の価値観や手法に過度に依存する人材では、必要なマインドセット変革の実現が困難なため、真にゼロベースでの思考が可能な人材、および変革リーダーシップを発揮できる人が重要になります。これらは技術的スキルというよりも、思考様式や価値観の問題ですね。

AIの台頭によって、例えば従来は年間10件程度のサービス開発が限界であったものが、年間100件のサービス開発が実現可能になりました。すると人員も1/10で充分になるのではないか、と聞かれることもありますが、その考え方はナンセンスだと思います。

できることが10倍になったのであれば、さらに組織として取り組む内容や、取り組み方自体を変えていくことができる。今までと同じことをやり続けるのではなく、これまでのルールを変革するゲームチェンジに取り組むことができるようになる、ということなのだと思います。

AI-Nativeな組織運営への転換

—— 組織プロセス自体の変革についてはいかがでしょうか。

AI Task Forceが現在行っている取り組みは、全業務プロセスと現状の包括的な棚卸しです。個別タスクをAIで代替するというツール的活用も重要ですが、より本質的には、棚卸しされた個別要素ではなく、業務プロセス全体をAI基盤で根本的に再設計することが目標です。

意思決定やマネジメントも、業務プロセスの構成要素の一つです。従来複数段階を要していたこれらの業務がAI基盤でぐっとスムーズになるなら、権限委譲を見直し瞬時に完了できる仕組みにすることもできる。それほど大きな変化をいとわないような、マネジメント手法や承認プロセスへの変更を決断する必要があるとも考えています。そのため、AI-Nativeなマネジメントおよび意思決定の手法は、従来とは大幅に異なるものになるだろうと予測しています。

—— 最後に、AI-Nativeというスタンスを持ち続けるうえで、最も意識すべき重要なポイントを教えてください。

AI-Nativeの推進により、従来の業務範囲が大幅に拡張・増加し、その形態も根本的に変化することが当然の結果として発生すべきであり、その方向性へと進めていくことが重要です。これからの時代において、我々の人員規模と顧客基盤を前提とすれば、実行可能な業務は飛躍的に増大する。そのため、拡張された可能性を最大限活用すべきだと強く思います。

ただし、その中で人間が担うべき核心的価値は「適切な判断能力」です。AIに任せられないこの判断力こそが、今後も不変的に求められる、人間の最も重要な能力だと思いますね。

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