
メルカリが掲げる「AI-Native」の実現に向けて、すでにほとんどのメンバーがAIを日常業務に取り入れはじめています。しかし、メルカリが真に目指す「AI-Native」がどのような状態・人を指すのか、理解しきれていない方もいるのではないでしょうか。
では、メルカリの「AI-Nativeな人」はどのようにAIを活用しているのか。それを確かめるため、内定者でAI Task Force運営にも携わる 堀内ゆり乃 ( @Yurino ) のインタビュー企画『Yurinoの「先輩、ちょっといいですか?」』が立ち上がりました!
第4回は、HRでデータ分析・AI活用推進を担当する 諏訪ひと美 ( @suwachan )。プロダクトのデータアナリストからHRへと異動し、男女間賃金格差の可視化・是正など、データで公平な働く環境づくりに携わってきた彼女に突撃。
アナリストにとってAIは「分析の民主化」か「高度化」か。空いた時間で何をすべきか。「東大卒の部下10人」を前提に業務をどう再設計するか——データとAIの両方で組織を支える @suwachan のインタビューを、ぜひお楽しみください!
この記事に登場する人
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諏訪ひと美(@suwachan)
2021年4月メルカリ入社。プロダクトのアナリティクスチームでデータアナリストとして2年強従事後、2023年8月にHRへ異動。データ分析・AI活用推進を担当。男女間賃金格差是正など、データで公平な働く環境づくりに携わる。
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堀内ゆり乃(@Yurino)
上智大学外国語学部英語学科4年。2026年度新卒としてメルカリに入社予定のインターン生。2024年10月に新卒採用チームでインターンとして入社後、現在はAI/LLM OfficeにてAI Task Forceの運営に関わる。趣味はドラム演奏。
「データで改善したい」意思があるかどうか
@Yurino: suwachanがAI活用に挑戦しようと思ったきっかけや時期を教えてください。

@suwachan: きっかけは2023年頃のChatGPTの3.5の登場です。この波に乗らねばと背中を押され、東大の松尾研が主催している「AI経営講座」を受講。さまざまな産業界でAIを活用しているゲストスピーカーの話を聞き、多様な分野でのAI活用事例を学びはじめました。
また、昨年メルカリでAI Task Force発足の話を聞いた時、すぐに「やりたいです!」と手を上げました。今はデータアナリスト業務と、AI Task ForceメンバーとしてHR領域でのAI推進の2軸で働いています。
@Yurino: suwachanは普段、どんなシーンでAIを活用されていますか?
@suwachan: 一番多いのは、分析でコードを書くときです。Google Colaboratory(Colab)上でコードを補完・生成してもらったり、分析レポートのロジックをチェックをしたり、分からない分析手法を教えてもらったりと、ほぼあらゆる場面で使っています。AIのおかげで、これまで時間やスキルの壁があってできなかったことができるようになった実感があります。
@Yurino: 分析にAIは欠かせない存在になっているんですね。データアナリストの視点から伺いたいのですが、生成AIの登場は「分析の民主化(専門家でなくてもデータ分析に触れやすくなる)」と「分析の高度化(すでに分析している人がさらにレベルアップする)」のどちらに近いと感じていますか?
@suwachan: 両方ですが、個人的には“高度化”のほうが強いと感じています。AIのおかげで分からないことをすぐ聞いて解決できるようになり、理解度や身に付くスピードが以前よりも段違いに上がったと感じています。なので新しい手法を試したり、分析スピードが上がってより深掘りができるようになっていくという”高度化”を後押ししてくれるものだと思いますね。「こういうことがやりたい」という意思があればAIは力になってくれますが、反対にそもそも「データを使ってこんなことが知りたい」という意思がなければAIがあっても宝の持ち腐れになってしまいます。民主化はAIがあれば進むというわけではなく、データリテラシー向上やデータドリブンな文化の醸成が必要となります。
もちろん、セキュリティやルールの制約もありますが、それ以上に「データで業務を良くしていく」という組織の意思がないと広がらないと感じています。だからこそ、組織として「どんなデータを持ち、どう整備し、どう使うか」を整理することが重要。「データをもって、さらに改善していきたい」という意志そのものが大事だと思います。

見えづらい不公平を、誰もが納得できる形で示す
@Yurino: キャリアについてもお聞かせください。suwachanはそもそも、どうしてデータアナリストの道を選ばれたのでしょうか?
@suwachan: 新卒でSEOやWebマーケティングをやっていて、データと分析の大事さを学んだ経験からです。私は文系出身なので、最初は数字も分析業務も好きではなかったけれど、やっているうちに楽しくなっていきました。また、文系として0から分析を学んだ結果、私の理解のプロセス自体がさらに他のメンバーにも教えていく力に繋がり、楽しくなっていきました。
その後さらにデータ分析を深めたいと考え、メルカリにプロダクトのデータアナリストとして転職しました。
@Yurino: その後、プロダクトのデータアナリストからHRに異動されたとのことですが、なぜHRの領域に挑戦しようと思ったんですか?
@suwachan: プロダクト領域でのデータアナリストを約2年経験し、一定の手応えを感じたタイミングで「次、自分は何をしたいか」を改めて問い直しました。そこで、働き方や人のキャリアに関わる問題を解決したいと気づき「HRのデータアナリスト」になることを決意し異動を申請しました。
@Yurino: データアナリストというスキルは変えずに、挑戦するフィールドを変えたのですね。HRではどのようなことをされているのですか?
@suwachan: データで現状を浮かび上がらせ、より良いHR施策や働き方を作る仕事をしています。代表例は男女間の賃金格差をデータで可視化して是正したプロジェクトです。一見見えづらい不公平を、誰もが納得できる形で示すことを意識しています。
@Yurino: 数字やデータが「証拠」になって、公平性の土台を作っているんですね。今後、AIがHRに入っていく中で、アナリストとして、その公平性をどう守っていけると思いますか?
@suwachan: 分析にAIが入ったとしても、最終的に責任を持つのは人間だと考えています。だからこそ、職業倫理を何より大切にしています。人はバイアスを持ってしまう生き物です。AIの提案などを過度に信頼してしまう自動化バイアスや、成功事例を過大評価し、正当なリスク評価を怠る生存者バイアスなどのバイアスがあることを前提に、その可能性を自分も持ち得ると自覚しながら、公平な評価・制度づくりを心がける。また、AIの出力は必ず人が冷静にレビューする。AIに書かせたレポートにもバイアスが含まれる可能性があるので、内容の確認は欠かしません。

効率化で終わらせない。空いた時間を価値に変える
@Yurino: suwachanは現在、社内でHR AI Office Hour(HRメンバー向けのAI活用相談会)も開催されていますよね。始めたきっかけを教えてください。
@suwachan: AI を使って改善できそうな業務があるが、どうやればいいか分からない、やってみたがつまずいてしまった、というシーンは誰でもあると思います。そういうときに気軽に相談できる場所があれば、より AI 活用が進むのではないかということで、昨年7月に始めました。AIを初めて使う人やつまずいた人が、「分からないからやめよう」で終わらない環境をつくりたいと思ったんです。
@Yurino: 相談に来るメンバーに共通する課題はありますか?
@suwachan: 一番多いのは、「AIにどこまでデータを入力してよいのか分からない」という課題です。人事はプライバシー性の高い情報を扱うため、不安を感じるのは当然だと思います。だからこそ、セキュリティ観点で問題のない範囲を一緒に確認しながら活用方法を考えています。技術的につまずくこともありますが、私自身もAIに相談しながら一緒に解決しています。
@Yurino: 実際にAIを使う上で、セキュリティ観点はどんなことに気をつけていますか?
@suwachan: 一つは、セキュリティ・プライバシーを守ること。メルカリにはセキュリティ・プライバシーチームやAIガバナンスチームがAI利用のガイドラインを整備してくれているので、それに従うことは必須です。もう一つは、アウトプットを必ず自分でレビューすること。自分で説明できるか、責任を持てるかを確認しています。「AIが書きました」では信頼を失いかねないので、この二点は欠かさないようにしています。
@Yurino: AI活用を推進する上で、必要だと思ったことはありますか?
@suwachan: AIで時間が生まれたときに、その時間を何に使うのかを考えることが重要だと思っています。返信が早くなる、会議に出られるようになる等も大事ですが、浮いた時間で、より価値の高い仕事に取り組むという目的があってこそ、AI活用は本質的な意味を持つと感じています。
@Yurino: 効率化の先にある時間の使い方まで考えることが大切なんですね。

人に向き合うために、AIを使う
@Yurino: HR業務のうち、AIと相性がいい領域と、難しい領域は何だと思いますか?
@suwachan: 現時点で、AIと相性がいいのは
①データ量が多い
②非構造化データを扱う
③正確性要件が高すぎない
という条件を満たす領域だと思っています。採用の領域は求人票やレジュメ、面接議事録などテキストデータが多く、スクリーニングやマッチング、日程調整など活用できる場面が多そうです。最終判断は人が行う前提ですが、AIが使えるかどうか、どうやったらより精度高くできるかを検証できる領域です。
一方で難しいのは、正確性が非常に重要な領域です。勤怠や給与計算などのペイロールはミスが許されないため、AIよりもRPA(Robotic Process Automation)などの確実な自動化のほうが適している場合もある。HRBPのように対話を通じて質を高めていく仕事も、現時点ではAI単体では難しい部分があると思います。

@Yurino: AI-NativeなHR組織を、データ基盤の観点からどう支えられると考えていますか?
@suwachan: そのためには、HRデータを「AIが安全に活用できる状態」に整備することが重要だと思っています。そのために、データを整理・構造化してAIリーダブル(AIが読み取れる形式)にすると同時に、ガバナンスを前提に「必要な人に必要なデータを届ける」設計を進めています。今後はこの基盤をさらに強化していきたいと考えています。
@Yurino: 今後チャレンジしてみたいことを教えてください。
@suwachan: さらに一歩踏み込んでよりAI-Nativeな業務への再設計・再構築に取り組みたいです。ある本で、AIを前提とした業務設計を考える上で「部下として東大卒の新卒が10人入ってきた。何をやってもらいますか?」という問いがあり、まさにそれだと思いました。AIエージェントは、優秀な東大卒のメンバーが24時間365日働いてくれるようなもの。そうした前提で業務を再設計するのはまだできていないので、チャレンジしていきたいです。言うは易し行うは難しですが、チャレンジしないと真のAI-Nativeな企業にはなれないと思います。
@Yurino: 業務を再設計していくと、HRの役割そのものも変わっていきそうですよね。AIが当たり前になった時のHRと、今のHRでは何が違うと思いますか?
@suwachan: 人間がいる限りは、相変わらず人に向き合う仕事は残ると思うんですよね。その上で、AIと共存していく中で色々な問題が起きると思うので、そこに対して、AIとHRの両方の知識を持って、そういう問題を解決していくという役割が大事になっていくのかなと思います。
@Yurino: suwachanにとって、AI-Nativeな人とは?
@suwachan: AIの可能性を信じて、ポテンシャルを最大限に引き出せる人です。社内のAI-Nativeな人に共通するのは「AIにできないことなんてない」という価値観を持っていること。制約なくチャレンジでき、どんな領域にもAIのレバレッジが効くポイントを見極められる人が、今は特にAI-Nativeな人だなと思っています。
@Yurino: これからAI活用にさらに挑戦しようとしているメンバーにメッセージをお願いします!
@suwachan: AI活用は変化を起こしていかないと進まない領域だと思います。大事なのはこの今の熱量を逃さないことだと思います。一緒にモメンタムを作っていきましょう!
@Yurino: ありがとうございました!

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撮影:タケシタ トモヒロ
