
リモートワークが定着し、AIが知識伝達の一部を担い始めた時代。新卒研修のあり方にも問い直しが求められています。
メルカリでは2026年4月、新卒全員が受講する共通研修「Training Week」を4日間・合宿形式に再設計しました。対面だからこそ生まれる偶然のコミュニケーションと共同体験を、プログラムの一部として設計しています。
昨年のmercanでは、12の研修プログラムの全容と、その設計思想を2本の記事で紹介しました。
今年は「何を教えるか」よりも、「なぜこう設計するのか」に踏み込むため、設計を担当したJuanに聞きました。キーワードは、3つの軸:スキル、カルチャー、そして関係構築。
この記事は、チームメンバーから寄せられた記事の構想や、内容のメモをもとにAIツールを活用して構成、執筆を行っています
この記事に登場する人
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Juan D. Garcia(@Juan)
People & Culture部門 Organization & Talent Development所属。2019年入社。新卒オンボーディング全体の設計・運営を担当し、Training WeekやDay One@Mercariのファシリテーターも務める。
「寄せ集め」にしない——3つの軸で設計する
—— Training Weekはどういう位置づけの研修ですか?
@Juan: 新卒全員が共通で受ける研修をまとめた期間のことです。エンジニアもコーポレートも、職種に関係なく全員が受講します。

ゴールは、メルカリのミッションやバリュー、オペレーションの基礎を短期間で身につけてもらうこと。エンジニアに向けては別途「DevDojo」と呼ばれるプログラムを用意しています。


—— 研修はどのような設計になっているのでしょうか?
@Juan: 「必要そうなものを足していく」だけだと、全体が説明しづらくなるんですよね。参加者にとっても”何のためにこれを受けているのか”が見えなくなる。そのためTraining Weekは、あらかじめ3つの軸で全体を分解して設計しています。“研修の寄せ集め”にしないための設計図です。
—— 3つの柱とは?
@Juan: スキルデベロップメント、カルチャーアライメント、関係構築。この3つです。Training Weekの全コンテンツは、この3つのいずれかに紐づいています。
- ビジネススキル・デベロップメント——理論と実務のギャップを埋めるパート。仕事の進め方、ビジネスマナー、1on1やフィードバックの研修など、新卒が最初につまずきやすい部分を共通言語として揃える。

- カルチャーアライメント——メルカリの価値観やオペレーションを理解するパート。Group Mission Workshop、I&D Onboarding、CS研修など、自分の職種に直接関係しないものも含む。「知っている」から「腹落ち」へ持っていくのがテーマ。

- 関係構築——研修の”中身”ではなく”やり方”の設計。対面にする、合宿にする、共同体験を入れる。横のつながりや帰属意識を意図して生み出すための仕掛け。偶然の雑談が増えるほど、心理的安全性が上がり、学びが深くなる。

—— 3つの軸のバランスは、どう決めていますか?
@Juan: 今年はカルチャーアライメント50%、ビジネススキル50%で実施したのですが、このバランスは事業の状況や求める姿に応じて毎年見直しています。
関係構築は独立したコンテンツというより、実施形態——対面か、合宿か、グループワークか——で効かせるものなので、配分とは別の軸で考え、全体の土台として考えています。
2026年に変えたこと、変えなかったこと
昨年の記事では、12のプログラムを約1ヶ月かけて実施していました。2026年は、設計軸はそのままに、運用と体験の両面で大きく手を入れたといいます。
1)4日間に集約
—— 最も大きな変更は?
@Juan: 研修期間を4日間に集約したこと。前回よりもコンパクトにしました。とにかく、ギュッと一箇所に集まり、実施することに。
研修期間が長引くに連れ、私たち研修を行う側は「ちょうど研修が入っていて仕事を回せない」となる時間も増えるし、参加者は仕事も覚えながら、あるいは部分的に業務をしながら研修を受けることになるので集中しきれない懸念もあります。
なので、研修を分散せず、集中して実施すること自体が、体験設計の一部だと考えました。
2)関係を”環境”で設計する
—— 実施場所も変わったんですよね。
@Juan: 1日目は東京オフィス、2日目以降はホテルで2泊3日一緒に過ごす合宿としました。
毎日同じ時間を過ごすことになるので会話の機会も増えるし、お互いを知り合うチャンスも増える。研修内容を変えるだけに留まらず、参加者同士の距離が縮まる条件を先につくってしまうことで、研修に集中しながらも仲間と過ごす時間も確保できる、という狙いです。

ただ、ホテルでの開催は私たちも初めての試みなので、正直ちょっと不安もありましたけどね(笑)。
会場では、意識的に席をシャッフルしたり、研修ごとにグループディスカッションで議論する相手をあえて固定しないようしたりと工夫を重ねたことで、話したことのない人と意見交換する機会にもなったと思います。その結果、時間を重ねるほど新卒同士の距離が縮まっていく手応えがありました。
3)「お客さま目線」を体感する
—— 新しく加わったプログラムは?
@Juan: 唯一新設したのは「ロジスティックス研修」です。ロジスティックスの拠点を訪問し、その環境を体感し、実際の作業もハンズオンで学ぶ。この目的は、お客さま目線を持ってもらうことです。“プロダクトの向こう側”を身体で理解するための研修ですね。

昨年のCS研修では札幌の拠点を訪問して実際の対応を見学し、どのような問い合わせが発生し、どんなスピードでどう応えているのかなどを体感してもらいました。
今年のCS研修はリモート形式でお客さま対応の見学を行い、”実務”のリアリティは維持。さらにロジスティックスの拠点を訪問することで、物理的な空間を見て、物理的な商品の扱いを行う「メルカリのリアルな側面」を体験することにフォーカスしています。
座学では得られないリアルな感覚や発見を、共同体験として持ち帰ってもらいたい。そういう意図での新設ですね。昨年のCS研修と同じく、やはり体感することの影響は大きいのか、参加者からも「インパクトが大きい」「実務に直結する」と高い評価が集まりました。

あえて対面で、合宿を行う理由
—— 知識伝達はオンラインやAIに任せる、という判断もあったのではないかと思いますが、対面研修を重視した理由もありますか?
@Juan: 知識共有やオンボーディングは、将来的にAIエージェントに任せられる部分が増えると思っています。でも「入社してよかった」と思ってもらう、成長意欲を持ってもらう、会社への共感や信頼を醸成する——そこは対面が担う比重が大きい。AIと対面のベストな組み合わせは、まだ試行錯誤中です。だからこそ、対面は情報伝達ではなく、感情と関係の設計に使う。

—— 過去の参加者からは、どんな声がありましたか?
@Juan: やはり「対面でできてよかった」というコメントが多いです。特に「話せなかった人と話す機会が特によかった」という声。横のつながりをつくることの価値が、ちゃんと伝わっているなと感じます。
オンライン研修に統一した場合、サッと隣の人に聞いてみたり、その場で気になったことを講師などに問いかけるハードルも高くなってしまいます。また、孤独感を感じやすくなる可能性も高まる。もちろん仲間と過ごす時間も必然的に短くなりますし、まさにコロナ禍でこのようなことを経験したことがありますので、そこからの学びを今回の設計に反映させています。
だからこそ、今後はもっと対面の機会がますます重要になると思います。今回合宿で実施したのは、過去の反応と課題意識を受けて踏み込んだ決断でもありました。

—— では今後のTraining Weekは、どう進化していくのでしょうか。
@Juan: Training Weekは毎年アップデートしています。目指しているのは、「コンテンツの一覧」ではなく「体験の設計」として進化させていくこと。
何を教えるかだけに留まらず、どういう順序で、どういう環境で何を体験してもらうか。そこに設計の本質があると思っているので、都度必要な研修を精査しながら、常にアップデートしていきたいと考えています。





